インデックスへ  
はじめに 大東流とは? 技法体系 入門方法 書籍案内
 トップページ >> 技法体系 >> 槍術 >> 合気薙刀術 >>
 
槍術を含み独特の体捌きを錬成する

■ 合気薙刀術 ■
(あいきなぎなたじゅつ)

 「なぎなた」は鉾(ほこ)、槍、刀剣とともに日本古来からの武人の用いた武器であり、その目的は戦場において敵を殺傷するものであった。その起こりははっきりしないが、『世鏡抄』によれば、「神代(じんだい)、須佐男尊(すさのうのみこと)が一騎当千の武将の武器として、梵天の龍の角の間に持たせて下さった」とあり、ために、これを「薙刀(なぎなた)」と書くとされている。

 薙刀は刀の部分に当る刀身の「尖先(きっさき)」「刀刃」「鎬(しのぎ)」「刀背(むね)」「血流(ちながれ)」から構成され、これを「はばき」「切羽(せっぱ)」「鐔(つば)」で、刀身部分と柄部分を二分する。柄部分(柄には「千段巻部と素扱部がある)は中握部を中心に「責金物(せめかなもの)」「巻止(まきどめ)」と、「水返」「鐓(いしづき)」がある。

薙刀/名称図

▲薙刀/名称図(クリックで拡大)

 構え方は大きく分けて五つあり、「聖眼・中段の構え」「半眼・下段の構え」「天地・上段の構え」などがあり、これに併せて「八相(はっそう)の構え」「脇構え」があり、西郷派大東流ではこれに「小脇構え」を加える。
 この「小脇構え」は「脇構え」の一種であるが、古人の実戦経験から、ひ弱な女性でも使いこなせるようにしたのが起こりで、直心影流の薙刀にも見られる。

 薙刀の、中段、下段、上段、八相、脇の五種類の構えは、それぞれに特徴があり、臨機応変に変化することが肝腎とされる。これらは攻防のいずれも含まれ、これに裏表が加味されて一体化されている。

▲天地上段の構え/曽川和翁宗家

 薙刀攻防の術では、人体の腹面を「表」といい、背面を「裏」という。戦闘において、攻める場合は敵の「裏」を攻めると同時に、「表」を攻め、自分は敵を「裏」に入れないように防御し、裏に入れないように用心することが大事である。

 西郷派大東流の足捌きは、穏陰之構(おんいんのかまえ)の足の構えに由来し、それを左に移したものが「穏陰之構・左構え」である。これは剣術などと対峙した場合、半身構えは逆となる。脚幅(あしはば)は「一足長半」を保ち、前足を軽く踏みだし、姿勢を整える。また後足は、敵の動きに応じて直ぐに退けるようにし、「浮氷を踏む」あるいは「浮き舟の躰」の足の教えに従うのを最も重要視される。
 以上述べた構えと、足捌きを以て、西郷派大東流は「合気薙刀術」と称している。

 薙刀は太刀よりも長く、長巻が変化したものといわれるが、太刀の刃に長い柄を付け、これによって人馬を一騎に薙払う武器として発明されたものである。
 これが遣い始められたのは天慶の乱(938)の頃であるといわれ、当初は「長太刀(なぎなた)」の字が用いられていた。しかし南北朝時代に入ると、四尺、五尺、七尺という長い刀が使用され、それらを「なぎなた」と称するようになった。

 流派としての薙刀術は徳川時代に入ってからであり、主に以降、武門の婦女子に稽古される風潮が生まれた。しかし一方で、実戦薙刀として神道流、新当流、天道流(天流)、根岸流、武甲流、東軍流、米田流、水鴎流、鈴ヶ流、静流、三和流、富樫流、留多流、穴澤流、常山流、柳剛流、先意流、直心影流、巴流、疋田流、念流などにも剣術を主体とした薙刀術ができ上がっていた。

 薙刀と槍を武器の上から比較すると、薙刀は切落しや薙払いを目的とした武器で、また、槍は「しごき」の技術を以て「突く」という事が目的であり、槍の柄の断面は円であるが、薙刀の場合は楕円である。
 これは刀の柄と同じく、刃のある方を手許で察知する為、斬り込んだ際の、手の茶巾絞りを良くする為に工夫された武器である。
 これは今日の大工道具の一種である、「金槌」の柄を考えれば容易に理解できることであり、断面が円よりも、楕円の方が打ち込む方向が均一になるからである。

 槍の場合は、「突く」「刺す」という事が目的であるのだから、手の裡の滑りを良くする為にこの断面は円であり、「捻り」が加わる為、突き出す際の手の裡は、拳銃で言うなら銃身の役割を果たし、その筒を通して突き出す技術になっている。これは棒や杖にも言える事である。

 さて、薙刀の深遠な技術は、総て半身で構える事が基本になっており、左半身で構えるというのが薙刀術の特徴であるが、西郷派大東流はこれに創意工夫を加え、最初から右半身で構える形もある。
 そしてこの薙刀の形を「法形(ほうぎょう)」という。

 薙刀術は槍術や棒術と同様、躰は半身に構え、足は鐘木足に開くのを玄理とする。
 法形は各流派によって異なるが、古流の形は流派の流祖が、その体験と、創意工夫によって構築したものであり、流派ごとに各々特徴を持っている。

 形の稽古をすれば、それを反復することによって躰の熟しや動作が機敏になり、正しい姿勢を維持する事が出来、更には「打ち」「突き」の機会・汐時が瞭になり、間合を知り、呼吸を悟る事が出来る。
 そして薙刀は振り降ろした際、その斬りつけるエネルギーが最大値を出すように斬りつける事が肝腎であり、柄の握りにどの部分が回転の中心を作るか、それを熟知する必要があるのである。


戻る << 合気薙刀術
 
聖眼中段の構え
 
 

 

Technique
   
    
トップ リンク お問い合わせ