■ 合気揚げと二刀剣 ■
(あいきあげとにとうけん)
●合気揚げと二刀剣・もぎり球
スポーツライター 宮川修明
合気揚げの中には、物理的に言って「崩しの理」が包含されている。互いが自然体の姿勢で静坐し、術者の手頸を受ける側が掴む。それを術者は一瞬にして上肢を崩し、完了と同時に、左右いずれかに投げ放つ。これが一連の合気揚げ、「手解き」による技法である。
「手解き」とは、合気を修練する為の、これを受ける側の「崩れを誘う事」であり、相手が術者の手頸を握った瞬間「抜手」によって抜く技術であったが、この抜手を用いる際に、敵が一瞬崩れる瞬間がある。この崩れる瞬間を、逆利用したのが、握らせたまま、相手を崩し、宙吊り状態にしてしまう「合気揚げ」である。
一般には、合気揚げは握らせた状態から、これを掛けると思われれいるが、単にこれだけでは相手を「天に吊る事」は出来ない。合気揚げのイメージ・トレーニングはあくまで、相手の握った吾が手頸を自在に抜き取ることから始まる。
ヒントは、揚げる事ではなく、「握られた手頸を抜き取る最初の動作」から始まるのである。そうすれば、どんな力で握られようと、その一切を「無効にする事」が出来るのである。(口伝あり)
次に、手頸は八個の骨が存在し、これを「手根骨」と云う。西郷派大東流の特徴は、この手根骨を自在に操り、「崩しの理」によって合気を掛けるのである。
合気は、相手を天に吊り、宙吊り状態にする事である。この宙吊り状態とは、一本のロープを相手に掴ませる状態にし、これを放せば落下してしまうのではないかという、錯覚を相手に負わせる事である。したがって落下するのが厭であれば、いつまでもロープに掴まるという反射的な行動が起こり、自ら自身で我が行動を封じてしまうという状態に陥るのである。
そして「抜手」に用いる手解きの一瞬と、合気揚げにして相手を吊り上げてしまう一瞬は相似形であり、この相似形をイメージ・トレーニングする事が肝腎である。
図は、このイメージ・トレーニングの必須条件として、二刀剣の鍛練方法を挙げている。二刀を同時に用いる場合、二刀剣あるいは合気二刀剣の要領に準ずるが、肝腎なのはこれを行う術者の「手根骨」である。手根骨に「旋回」のイメージを齎さないと、この部分は自在に操る事が出来ない。
今回は、特別に曽川宗家からお許しが出たので、この鍛練方法と手根骨を自在にする「さわりの部分」だけを触れてみた。 |