トップページ >> 書籍案内 >> 大東新報 >> 第二次関東大震災Xディ >> | ||||||||||||||||||||||||
さて、かつて一九七八年当時、東京都が発表した「東京における地震災害の想定に関する調査研究白書」によれば、次回予想される第二次関東大震災の予測規模は、マグニチュード7.9クラスの大地震で、その震源地は相模トラフ上を中心に、その地震規模は大正十二年(一九二三年)九月一日午前十一時五十八分に発生した、相模トラフ沿いの断層を震源とする関東地震(マグニチュード7.9)による災害とほぼ同規模のものとしている。 大正十一年当時のこの地震は、南関東で震度6。被害は、死者九万九千人、行方不明四万三千人、負傷者十万人を超え、被害世帯も六十九万に及び、京浜地帯は壊滅的打撃をうけた大地震であった。またこの大震災の混乱に際し、朝鮮人虐殺事件や亀戸事件や甘粕事件が発生したことは有名である。 第二次関東大震災を予測した東京都調査では、七六年当初、人的被害は死者が九千人程度と予測していたのであるが、この数字は到底信じる事ができないものとして変更が繰り返され、更には阪神・淡路大震災の被害率から考えて日を追うごとに修正が繰り返され、七八年ではその死者の数が三万七千人となり、火災等も発生する事が考慮されて、公表数は日増しに増加の一途にある。 この数字の塗り変えのベースになったのは、東京防災会議地震部会が発表した「人的被害の推定に関する調査報告書」であり、同書によれば、焼死者は五十六万一千人と、既に東京都が発表した七十六年当時のもので、今日では死者一〇〇万人を超えるであろうとも予測されている。 もし、時間的に通勤時のラッシュアワーに重なり、こうした交通事故や、高速で走る車輌の脱線や転覆が起これば、当然圧死による死者の数は鰻上りに急増し、恐らく一〇〇万人を軽く超える数字に達するのではないかと予測されている。こうなった場合、これは単に「大震災」では済まされない現実が襲うのである。 ●第二次関東大震災の危惧 関東ローム層を基盤とする東京は、遥かに京阪神や東海地区より地盤が不安定で、悪いのである。 ローム層(loam)とは、砂、シルト、粘土がほぼ等量に含まれる風化堆積物であり、一般には壌土と言われる地盤であり、風成火山灰土の一つである。この代表的なものが「関東ローム層」であり、一〇メートルに達する層を成している。この風化堆積物の中には酸化鉄に富み、赤褐色で、主成分は赤土(あかつち)である。そして第四紀に箱根山、古富士山、男体山、赤城山、榛名山・浅間山などの各火山から噴出した堆積物が重なって出来たものが国際都市・東京の地盤である。 地震学者の予測によれば、地震発生後四、五分で、江戸川区、荒川区、江東区、葛飾区、足立区、墨田区などの下町密集地帯に液状化現象が起こり、地盤に異変が発生した後に、建物が崩壊するという被害予測が成されている。 そして液状化の地質構造は、砂粒の間に飽和していた水の圧力の変化で水が動き、砂の粒間結合が破られて、砂全体が液体のようにふるまうと考えられる。 こうした事を念頭において、地震に備えて危機管理を実践している人は余りにも少ないのである。阪神・淡路大震災当時(一九九五年一月)、一応の危機管理は叫ばれていたが、それは殆ど機能しなかった。京阪神地区の交通網は寸断され、ために六四〇〇人以上の死者を出した。 活断層は、将来もズレる可能性があり、今もなお活動中とみなされる。地形にズレが残っている事など、近い過去に活動した痕跡が存在する地域を差し、断層の活動は震源となるので、活断層の調査は地震予知上重要な調査課題となっている。 さて、液状化現象一つ取り上げて見ても、江戸川と荒川放水路に囲まれた江東地区、並びに新小岩以西の東京湾岸、更には千葉県浦安方面のディズニーランドを含む地域では、地盤が沈下する可能性が大きく、その範囲は東京都だけでも六八・九平方キロにも及ぶとされている。 大正十二年の関東大震災の約七十年前には安政大地震(一八五五年)が起こり、液状化現象の大被害は現在の江戸川区や葛飾区にまで及んだと言われている。この時の大地震では、地面が割れ、地下から水や泥が噴き出し、二万戸以上の家屋が倒壊し、約一万人以上が死亡したとある。しかし当時は、現在よりも人口が少なく、また建物も殆どが二階建もしくは平屋で、今のような高層ビルは建っていなかった。それでも液状化現象でこれだけの死者を出している。 こうした情況を踏まえ、今、この地域に震度6程度の地震が発生したら、三階建から五階建のビルの中層ビルの三〇%程度は間違いなく倒壊し、震度7ならば四〇%近くが倒壊すると予測されている。特に江東デルタ地帯は、極めて柔らかい沖積層(沖積世/完新世)に生成した地層で、地質学上では最新の地層と言われている。この地質は沖積統とうとも言われ、最後の氷期の最低温期(約二万年前)以後に、台地を刻む谷を埋めて堆積した、やわらかで水を含んだ粘土ならびに泥炭等から形成された地層で、その厚さは江東デルタ地帯で約二〇〜四〇メートルと推定されている。そして地盤上の不利はそれだけに止まらず、家屋の倒壊に関しては、山手地区の十倍以上とされ、更に津波の危険性もある地域である。 そして液状化現象や建物倒壊による被害よりもっと恐ろしいのは大火災である。 分子式 CH4からなるメタンガス(Methan/ドイツ語)は、最も簡単な炭化水素であり、このガスは天然ガスや沼沢の底より発生するガス中に存在する。また、腐敗した動植物から発生し、石油分解ガスや石炭ガス中にも含まれる。そして無色無臭の気体であり、空気中で点火すれば淡青色の炎を上げて燃える特徴を持つ。現在では燃料や合成原料として重要な物質文明の基盤を成しているが、ひとたび燃え狂えば、この沼気と称されるメタンガスは猛威を揮って人間を襲うのである。 かつて在った事は必ず起こる。これは歴史の証明するところである。
●大混乱と大激変の帰宅難民 大正十二年の関東大震災では、直径六〇メートル、高さ二〇〇メートルという凄まじい火災旋風が吹き荒れ、この猛威で焼死者は何と一四万人に達した。 しかしこの大惨事は単に人的被害に止まらない。これはほんの序の口に過ぎず、細やかな主役が登場する序曲に過ぎないのだ。本当の大惨事はこれからなのだ。 予測あるいは推定という数字は、あくまでも控えめの数字である。特に政府関係筋の出す数字は、通称「大本営発表」と称され、悪い事態や、政府にとって都合の悪い出来事は過少評価し、良い事については過大評価して、それも、大袈裟に公表するというのが、明治維新以降の日本政府の遣り方であり、太平洋戦争当時、多くに日本国民は、これにとことん振り回された。 交通網が断たれ、通信網が断たれると、まず帰宅できないサラリーマンやOLが「帰宅難民」と化す事が考えられる。東京は各主要企業の中枢部が置かれているばかりでなく、政府関係の各省庁もここに集積し、それに関連する枝葉が蹤いて、企業構造はピラミッド型を成している。そしてこうした関連下に従事する人口は、約九五〇万人以上と推測され、そのうち約三〇〇万人以上が帰宅難民となるであろうと言われている。 これに加えて、家屋の倒壊や火災で家を失った「地震難民」が加わり、その被害率は地震発生三日目で約三五〇万人に達するといわれる。しかも東京に群がる人口は決して都内だけではない。千葉、神奈川、埼玉、群馬県・高崎などの地域を含めたら、東京圏での全人口は約三〇〇〇万人以上にも上るから、こうした被災者難民数は軽く五〇〇〜一〇〇〇万人にも達するといわれる。最早こうなると、単に大惨事だけでは済まされなくなる。各地であらぬ流言が起こり、パニックも続発するであろう。 こうした大惨事が更に次の大惨事を呼び、空前絶後の大災害は当然経済にも大きな影響を及ぼす。 阪神・淡路大震災では日本経済の頸動脈が断たれたといわれたが、東京で同規模の地震が発生すれば、頸動脈が断たれた位では済まされないのである。間違いなく、心臓に繋がる大動脈を断たれる事になるのだ。
●アルカリ骨材反応の脅威これまで指摘されたり、発見が極めて困難であった建造物の「アルカリ骨材反応」という現象が、この時期に至って浮き彫りになり、表面化し出した。 アルカリ骨材反応とは、セメントの中のアルカリ成分と、砂や砂利の成分が結びついてこれらが膨張する化学反応である。そのために建造物のコンクリート(concrete/セメント・砂・砂利・水を調合し、こねまぜて固まらせた一種の人造石。製法が簡単で、圧縮に対して抵抗力が強く、耐火・耐水性が大きいので鋼材と併用し、土木建築用構造材料として使用)には罅割れが生じ、この罅割れ幅が二ミリ以上になると、コンクリート内部の鉄筋破断が生じるという現象である。 この現象は時間と共に大きくなり、鉄筋部分は次々に破断を生じ、ついには建造物が崩壊するという風化現象であるが、こうした破断進行期に、例えばマグニチュード7クラスの地震が発生した場合、崩壊するという危険性が、建築学者の中から指摘し始められた。 もともと建造物は、建設された当初、ほぼその儘の状態で、半永久的に建っているという考え方で造られている。途中でコンクリート内部に鉄筋破断が生じるなどとは、夢にも思わず造られている。少なくとも、十数年前はこうした考え方が一般的であった。 ところがこうしたアルカリ骨材反応という、建造物を蝕む直接の崩壊原因に繋がる、現象が指摘され始めた今日、これは到底、隠し通せぬ事柄となり始めた。 都合の悪い情報は決して流さない。 そして今日も、この伝統は行政機関の中で頑迷に守られているが、現在のように情報が発達した時代に、このような隠し事をして、国民にその危険性を知らせることを拒む行為は、実は彼等自身の官僚の怠慢であり、むしろ、大災害などが生じた場合、逃げ遅れて多くの犠牲者を出すことは火を見るより明らかである。 特に、国土交通省が監督・管理する新幹線、砂防ダム、高速道路は、コンクリート建造物の風化と老朽化が確実に進み、アルカリ骨材反応によって鉄筋破断が起こっていることは明白な事実であり、行政がこれ等の危険な現象を、一時的には隠し果(おお)せても、一度マグニチュード7クラスの大地震が発生すれば、これ等の建造物は崩壊を免れないであろう。 ●悪い時には悪い事が起こる歴史法則東京には各主要企業の情報中枢が集中し、一部上場並びに東証二部はここに多くの本社が集まっている。軍体組織で言えば、総司令部であり、ここが崩壊すれば日本経済は完全にマヒ状態に陥り、株価は大暴落を起こし、土地や建物も大暴落して、その評価額は半分以下に下がるであろう。この結果、日本の金融システムは事実上崩壊することは間違いない。 この崩壊によって、債権、特に国債は大暴落し、紙屑同然になって、長期金利の上昇はまず免れない筈である。日本の国家破綻には益々加速度がかかり、中期あるいは長期的には日本を巨大なハイパーインフレが襲うであろう。これはまだ人類が、市場経済で経験して無いだけに、非常に恐ろしい状態になると予想される。 「TOKYO壊滅」の第一報が全世界を駆け巡ると同時に、日本は世界中からジャパンマネーが引き揚げられ、それを受けてニューヨーク株式は大暴落し、アメリカ国債も大暴落して、世界的規模の金融パニックが全世界を震憾させるのである。 そしてこの金融パニックが世界大恐慌に変貌し、続いて国家破綻、更には借金棒引きの徳政令までが出現して、経済状態は凄まじいハイパーインフレに陥るであろう。つまりこうした流れが、資本主義の崩壊に繋がるのである。 歴史は必ず繰り返すものであり、また悪い時には悪い事が重なるというのが、人類有史以来の歴史が証明していることである。 日本列島が横たわるマントルの上には、何をするか予測のつかない巨大なエネルギーが潜んでおり、またその列島の太平洋側には、正面から太平洋プレートが迫り、太平洋の南側からフィリピンプレート、太平洋の北側から北アメリカプレート、更には日本海側からユーラシアプレートが迫り、今でも日本沈没の為にその息を潜めているのである。 そしてこれは規模において多少の違いは出てくるが、直下型地震が起これば、東京の三割から五割程度は炎上し、消滅する事は免れないであろう。 東京首都圏(千葉、神奈川、埼玉、群馬県・高崎など)を合わせると、現在約三〇〇〇万人が住んでいるが、仮に運良く生き残っても、家屋を失ったり、路頭に迷う難民数は五〇〇〜一〇〇〇万人に達し、これはもう人類史上最悪の大災害となることは必定である。 大正十二年九月一日の関東大震災では国民総生産(GNP)の約三割が消し飛んでしまったが、第二次関東大震災が起これば、これを遥かに上回る数字に上るであろう。
|
|
|||||||||||||||||||||||