食べ合わせ 2
●胃の酸性条件下でニトロソアミンが生成する

 中毒症状を起こし易いジメチルニトロソアミンは、肉類に含有されており、ジメチルアミンが、そこに添加された亜硝酸ナトリウム(化学式NaNO2で、硝酸ナトリウムに鉛を加えて溶融して製した無色の結晶)と反応するという事である。
 これを化学式で書くと、次のようになる。

ジメチルアミンと亜硝酸とジメチルニトロソアミンの化学式

 魚肉製品やハム、ソーセージ、ベーコン、チーズなどの食肉や乳製品には、かなりの量のジメチルニトロソアミンが含まれている。
 特に、魚肉や食肉に亜硝酸塩(亜硝酸の塩類で、水溶液はアルカリ性を呈する)を添加した場合や、燻煙処理した魚介や獣肉の燻製(くんせい)には、ジメチルニトロソアミンの含有量が多くなる。

 かつてドイツの有機化学者J・サンダ−博士が、ラットに、種々の魚介や獣肉の燻製と第二級アミンと硝酸ナトリウムを与えて、2時間後に結果を調べると、ラットの胃の中には、かなりの量のニトロソ化合物(ニトロソ基-NOおよびアミノ基-NH2を持つ化合物)が生成していることを発見した。これは胃内の酸性条件下で第二級アミンが、ニトロソ化することを発見したのであった。

 第二級アミンが食肉などに多く含まれるのと同じように、亜硝酸塩はレタスなどの生野菜に多く含まれ、また、茹(ゆ)でた菠薐草(ほうれんそう)や、高菜漬やキュウリの塩漬にも含まれ、これらからは高濃度のニトロソアミンが認められた。
 こうした実験結果より、また、第二級アミンはメチルベンジルアミンと結びつく性質があり、硝酸ナトリウムと共に、8週間に亘り、ラットに与え続ければ、14週間後には、多数のラットに食道癌は発生していることが確認された。

 これは胃の中で第二級アミンと亜硝酸が反応した結果、ニトロソアミンを生成し、これは発ガン性を齎し、食道癌はウサギでも認められたと報告している。また、イヌでも食道癌が認められた。
 イヌの胃での実験結果からは、ピロリジンと亜硝酸の反応によってニトロソアミンが生成されたからであり、その生成率は0.2%に達したと云われる。

 ヒトにおいては、動蛋白摂取の食事をした後に、血液中のニトロソアミンの濃度は上昇したと報告されている。更に、次なる報告では、ベーコンと菠薐草(ほうれんそう)を食した後で、血液中の状態を検査したら、35分後にはジメチルニトロソアミンが、65分後にはジエチルニトロソアミンの血液中の濃度が上昇したことが認められている。

 日本における胃癌の発生率は、諸外国に比べて圧倒的に高い。その原因として考えられることは、硝酸塩の摂取過剰であり、その元凶をなすのは、塩干しした魚肉や、これに合わせた漬物類や生野菜などであり、日本の食指導は、「肉と野菜をバランスよく」がスローガンとなっているので、これらの肉に合わせて、肉相当の野菜を食べようとするからである。

 特に、レタスやキャベツの千切りなどの生野菜は、ステーキなどの食肉に添えられていて、これを出来るだけ食べようとする人が少なくない。しかし、この涙ぐましい努力が、かえってガン発生率を高めているのである。
 日本はガン発生王国である。この国が飽食の国であるからだ。

 この元凶は、魚肉や獣肉だけを食べて、野菜を食べない外国人よりも、ガン発生率が高いと言う皮肉な結果となっている。つまり、現代栄養学が掲げる、「肉と野菜をバランスよく」のスローガンが、ガン発生率を高め、食指針が裏目に出ている事である。

「肉と野菜をバランスよく」のスローガンから出た間違った現代栄養学の食指針の「肉と野菜」の基本メニュー。
 日本のガン発生率を、世界第一位に押し上げているのは、このスローガンに元凶がある。

 肉に含有する第二級アミンと、レタス・キャベツ・菠薐草・高菜漬などの漬物から摂取された硝酸塩が体内に取り込まれ、硝酸塩は唾液中で亜硝酸に還元され、一方、第二級アミンはそれと反応して、大量のジメチルニトロソアミンを生成する。これこそ、「肉と野菜をバランスよく」を掲げる現代栄養学の大きな誤りと言えよう。

 「肉と野菜をバランスよく」よりも、「肉だけを食べた方が、まだましだ」という食事法は、野菜を殆ど食べない人よりも、最悪の結果を招いている現実は、何とも皮肉なことである。
 また有機化学の分野では、食品中の微生物の働きで、胃の中の硝酸が亜硝酸に還元されると言う現象も発見されている。

 日本に次いで胃癌の多い国は、南アメリカ南西部に位置するチリである。チリの鉱産物といえば、硝石・銅・鉄鉱石などであり、豊富な量が埋蔵されている。
 特にチリは、チリ硝石の産地で世界的に有名な産出国で、毎年、数百万トンに及ぶ硝酸塩が飼料として散布されている。この意味から、硝酸塩を摂取する量に於ては、日本とひけをとらない。こうした事情が、日本に続く、胃癌の多発を齎している。

 胃癌の元凶は、魚肉や獣肉に含まれる第二級アミンと、野菜の硝酸が唾液中で亜硝酸に還元され、これによりニトロソアミンが生成されることである。

 多くの日本人は、現代栄養学の食指針に従い、魚肉、獣肉、またこれらの加工食品であるハムやソーセージ、あるいは様々な乳製品などを大切な蛋白源と心の底から信じ切っている。全く疑っていないのである。それは妄信と言ってもよいほどだ。

我が子に対しては、良質なアミノ酸蛋白質を摂らせる為に、肉と共に少しでも多くの野菜を摂らせようとする涙ぐましい現代の母親像がある。これは現代栄養学を信奉するあまりのことであろうが、実は知らず知らずのうちに、ニトロソアミンを体内で生成させ、ガン疾患へと加速を早めている愚行に他ならない。

 今日の「団塊の世代」が、次々にガンで斃
(たお)れていくのは、食の誤りに元凶がある。あるいは心筋梗塞などで過労死【註】働く世代の過労死の元凶はスタミナがないからであり、その根本原因は、体力がないのではなく、体質が悪いからである)に追いやられる現実は、その「団塊の世代」を育てた、母親の現代栄養学を信奉するあまりの元凶だった。現代栄養学への妄信が、種々の現代の難病や奇病を作り出しているのである。

 しかし、この元凶を知らない母親たちは多い。知らぬままに、「肉と野菜をバランスよく」が伝承されていく。
 「団塊の世代」の母親たちは、次に「団塊の世代ジュニア」たちに、この元凶を引き継がせた。
 この最たるものが、子供に食べさせるハンバーグと共に、突き合わせとして添えられている菠薐草や人参などの野菜である。
 獣肉には第二級アミンが多く含まれていて、野菜に含まれる硝酸は唾液中で亜硝酸に還元され、それが第二級アミンと反応して、ニトロソアミンを生成させることが起るのであるが、これを知る母親は少ない。

 そして、知らぬまま「団塊の世代ジュニア」の母親たちは、更に、自分の子供を、発ガン性のある食事へと逸
(はや)り立てている。

 その一方で、現代栄養学と厚生労働省の「肉と野菜をバランスよく」と、「一日30品目の食品を摂取する」というスローガンが相まって、レタス、キャベツ、菠薐草、ピーマン、獅子唐(ししとう)、トマト、キュウリ、茄子、さやえんどう、グリーンピース、ブロッコリー、ピクルス、セロリ、セリ、ゼンマイ、にら、水菜、長ねぎ、わけぎ、春菊、蓮根、木の芽、山椒(さんしょう)、大蒜(にんにく)、茗荷(みょうが)、トウモロコシ、赤株、牛蒡(ごぼう)、らっきょ、生姜(しょうが)、竹の子、玉葱(たまねぎ)のスライス、ジャガイモのポテト、人参、マッシュルームや椎茸(しいたけ)などのキノコ類、大根おろし、沢庵(たくあん)、梅干、福神漬、うどの酢もの、白菜や高菜の漬物などの野菜に含まれる亜硝酸(硝酸も体内に入ると亜硝酸になる)によって、胃の中でニトロソアミンに変換されると言う、寔(まこと)に恐ろしい「食べ合わせ」の悪い、危険な食事をしているのである。

 現代日本人は、知らず知らずのうちに「肉と野菜をバランスよく」のスローガンに慣らされ、これが正しい食理論と思い込むようになった。しかし、これこそ「食べ合わせ」の悪い相尅ではなかったか。この相尅こそ、食への誤りの元凶ではなかったか。

 元凶は、更に次なる元凶を作り出し、ただ複雑にするばかりでなく、新たな変化を現代人に齎し始めた。
 この著明なる変化が、発ガン性を発揮する食品の氾濫(はんらん)である。

 近年の生化学の研究報告によると、第二級アミンの化学構造を、少しずつ変化させたニトロソアミンを作り出して行くと、それらのニトロソアミンの臟噐親和性は変化して、種々様々なニトロソアミンが生成され、その種類によって、臟噐には色々なタイプの発ガン性を発揮する兆候が顕われるという事を報告している。つまり、種々のタイプのニトロソアミンが、体内の細胞の種々の箇所に停滞して炎症を起こし、正常細胞に畸形(きけい)を加え、ガン細胞へと病変させることだ。
 食道で発症すれば食道ガン、肝臓で発症すれば肝ガン、腎臓で発症すれば腎臓ガン、肺臓で発症すれば肺ガン、膀胱で発症すれば膀胱ガンというように。

 こうなると、ニトロソアミンによる発癌の脅威は、胃だけに止まらず、あらゆる臟噐や、筋肉や骨格の部位等にも発ガンの脅威が猛威を振るうことになる。
 ニトロソアミンの生成が発生することこそ、人体にとっては、げに恐ろしき、由々しき事態であり、魚肉や獣肉に含まれる第二級アミンと、野菜に含まれる亜硝酸の「食べ合わせ」が、様々な発ガン性を発揮させていることになる。

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