食べ合わせ 3
●未精白米に見る「天の配列」

 第二級アミン(肉)と亜硝酸(野菜)の食べ合わせこそ、人体に発ガン性を齎させる元凶である。こうして考えて来ると、「食べ合わせ」は確かに存在していることになる。

 つまり、「鰻(肉)」と「梅干(野菜)」は、確かに「食べ合わせ」が存在していたことになり、これを古代人は自然のうちに身に付け、直感めいた感覚で、「食べ合わせ」の危険を薄々感じ取っていたことになる。
 今日の感覚で云えば、「食べ合わせ」により、肉と野菜の不具合が起れば、ガンが発症することを知っていたともいえる。

 だが、古代人の智慧(ちえ)は、こうした直感による感覚だけではなく、肉の第二級アミンと、野菜の亜硝酸との反応を、見事に停止させてしまう智慧までも身に付けていたのである。彼等は、「天の配剤」があることを知っていたのである。

 それは、未精白米に含まれるビタミンB群およびビタミンEのような主栄養素が、還元作用を持つ化合物の生成を停止させる働きを知っていたのである。

コメの主栄養の比較分析(クリックで拡大)

 ビタミンなどの主栄養素は、還元作用を持つ化合物に対し、ニトロソアミンの生成を抑制してしまうのである。
 特に、玄米と云う未精白米は、精白米と異なり、ビタミンB群やビタミンEを豊富に含み、この主栄養素が、「食べ合わせ」によって作り出されるニトロソアミンを生成する害を抑制してしまうのである。未精白米の玄米こそ、非常に栄養価の高い、バランスのとれた「天の配列」ではないか。

 日本人の考える「栄養論」のイメージは、動物性の高脂肪・高蛋白の食品だけが、「栄養価が高い」と思い込んでいる事である。その思い込みの最たるものが、「肉は最高のスタミナ食」と思い込んでいる事である。
 しかし、動蛋白の持つアミノ酸こそ、各種の有害腐敗産物を生成する元凶なのである。

 現代栄養学は、肉食推奨論の立場にたって、肉の蛋白質の構成要素がアミノ酸であることを理由に、これを奨励しているが、こうした肉食礼賛と共に、「肉と野菜をバランスよく」などの妄信的信仰が、実は病理現象を齎(もたら)す元凶であると云うことに気付いていない。ある意味で、難病・奇病のトラブルメーカーと云うべき存在である。

 人間は歯型からも分かるように、その肉体的特長は穀物菜食をする水冷式哺乳動物である。この草食動物である人間が、穀物菜食に徹することは、ごく自然なことであり、これ以外の食は、ホモ・サピエンス、ただ一種といわれるヒト科の動物には適さないのである。

 その証拠は、魚肉や獣肉や乳製品などの動蛋白食品に含まれる蛋白質は、それが、そのままの形で体蛋白になって行くのではなく、一旦、炭水化物に還元され、体蛋白を作る素材として遣(つか)われる。しかし、草食動物であるヒト科の人間は、体躯構成ならびに消化組織の上、その還元酵素を殆ど持たない。

 還元酵素を持たないと云うことは、これが体内に取り込まれると、動蛋白食品は腸内で停滞し、異常醗酵を起こして、これは毒素化する。この毒素化は、血液の汚染に繋(つな)がり、血液が単に酸性化するだけではなく、酸毒化すると云うことだ。

 血液が酸毒化すると、まず、細胞組織に混乱が起る。次に、大量に生み出された老廃物が組織に停滞したり、粘膜を刺戟して異常分泌を起こす。これが組織の血行不全に繋がり、組織を破壊して行く。

 動蛋白食品の消化過程で生じた強酸類は、性腺を異常刺激して、性的な興奮状態を引き起こす。肉常食者が短命なのは、内臓機能の老化を早める為で、肉の消化・分解によって発生した強酸類に血液が酸毒化される為である。

 しかし、現代栄養学者たちは、「肉が悪いのではなく、肉に含まれる動物性脂肪が悪いのであって、肉に含まれるアミノ酸や蛋白質は必要である」といっている。
 だが、この言は、脂肪と同じく、動物性蛋白質が持つ、そのものが人体には有害であり、腐敗した結果、第二級アミン、アンモニア、硫化水素といった腐敗産物が血液中に持ち込まれるからである。これにより、異常刺激を与え、成人病やその他の難病を発症させるのである。その代表的なものが、ガン疾患であろう。

 発ガンは、正常細胞がガン細胞に変質するところから始まる。この発ガンについては「二段階説(two step theory)」なるものがあり、正常細胞がガン細胞になり、体組織が、ガンに変異して行く過程を二段階で顕わしたものである。

 第一段階はイニシエーションinitiation広義には加入という意味を持ち、入社後の組織の一員になることを指し、変化が生ずる際の通過儀礼的なもの)と言われるもので、不可逆的であり、この作用を受けた細胞は、もはや元には復元できない。
 次に、第二段階のプロモーション(promotion)で、可逆的な作用を指す。

 さて、世界ではじめて人工ガンをつくったのは、日本の山極勝三郎博士と、市川厚一博士で、両博士はウサギの耳にコール・タールを塗り続け、長期反復塗布により、人工ガンを発生することに成功した。
 この報告は、大正三年(1914)に報告され、癌研究史上最初の実験的発癌であった。

 その後、タールを分析し、この物質にはベンゾピレンbenzopyrene/分子式 C20H12で、5個のベンゼン環が縮合した芳香族炭化水素。黄色の結晶を持ち、コールタールの中に含有され、強い発ガン性を持つ)などのような発ガン性の炭化水素が含まれていることを発見した。そして、このガンこそ、表皮ガンであった。

 この発ガン実験において、発ガン性炭化水素を何回か皮膚に塗布するだけでは、中々ガンは発生しないことが分かった。しかし、塗布を繰り返した後、しばらくして、それ自体には発ガン性のないクロトン油Croton tiglium/トウダイグサ科の植物から採取できる油。この植物はマレー原産の熱帯・亜熱帯に分布する低木で、この植物の種子からは油が採れる。成分としてホルボールを含有する)を同じ場所に塗り付けると、簡単にガンが発生することが分かった。

 人工ガンの発症実験は、ベンゾピレンのような、発ガン性炭化水素は正常細胞をガン細胞に変える働きのイニシエーションはするけれど、それだけでガンは発生せず、更にもう一つのステップである、プロモーションが起って、はじめてガンが発生するのである。

 イニシエーションは、それ自体が不可逆的である。この作用を受けた細胞は元には戻らない。
 イニシエーターとして確認されている発癌物質は、細胞内のDNAに損傷を与えるようなニトロソアミン、ベンゾピレン、メジチルアミノアゾベンゼンなどが挙げられるが、それに対し、プロモーションの過程は可逆的であり、プロモーターとしての作用が停止されれば、細胞はイニシエーションを受た段階で停止され、それ以上の変質の進行は見られない。

 つまり、イニシエーターで停止されれば進行は見られないのである。これが第一段階であり、これに関与する第二段階のプロモーターが作用すると、発癌物質が作動することになのである。

 プロモーターとして知られる代表格は、クロトン油の他に、アルコール飲料が齎す「食道ガン」、フェノバルビタールが齎す「肝ガン」【註】肝臓に発生する癌腫(がんしゅ)の総称を肝臓ガンと云うが、肝癌という場合には、特に肝細胞に由来する癌を指す)、高脂肪食が齎す「大腸ガン」などが挙げられる。

 一般的に言って、強力な発癌物質には、イニシエーションとプロモーションの両方が働いて、炎症を起こし、ガン腫が発症するのであるが、それ等の発ガン性物質も、量が少なければイニシエーション止まりとなる。

 二段階説から分かることは、イニシエータ−物質とプロモーション物質の両方が一緒に摂取され、これが反応を起こし、生成した時点で、最も恐ろしい、現代の「食べ合わせ」の相尅の悲劇が始まるのである。

 もし、食を誤りや、食への慎みを忘れて、万一、ガンが発症したならば、これまでの食生活の不摂生と無知を反省して、霊的食養道を心掛けるべきであろう。
 霊的食養道では、ガンを一種の憑衣現象と見る。憑衣から解かれる為には、これまでの食生活の誤りを根本から正さなければならない。食生活の誤りから起る元凶は、動蛋白を中心とした食生活であり、「食べ合わせ」から考えれば、肉と野菜をバランスよく摂取すると言う現代栄養学の誤りが、こうした元凶を招いていると言える。

 この事が分かれば、動蛋白の摂取は必要無く、栄養価の高い玄米を中心として、玄米穀物菜食に徹すれば、炎症で変質したガン細胞は可逆的なルートを辿って、再び元の正常細胞に戻って行くのである。
 それは丁度、悪業三昧(ざんまい)を繰り返した放蕩(ほうとう)息子が、社会の荒波に揉(も)まれて人生の機微を経験し、反省して、親許(おやもと)に返って来るような回帰現象に似ている。ガン細胞は、正常細胞が変質した、一時的な不良少年のようなものである。

 しかし、こうした不良少年も、やがて人生を経験し、自分の間違いを悟り、正常な状態に戻って行くのである。ガン細胞と正常細胞の徹底的な異差は殆ど無く、敢えて云うならば「変質した」ことに違いを見い出すだけである。
 非行少年も善導すれば、また元の普通の少年に戻って行く。その非行少年であるガン細胞を駆逐し、徹底的に退治するのではなく、元は正常細胞であったことを認め、これを善導すれば、正常細胞に戻って行くのである。

 イニシエーションで、食に間違いに気付き、此処から引き返すことが出来る人は、その段階で止まるが、それより深入りして、プロモーションに突入すれば、此処から引き返すことは非常に難しくなる。

 しかし、現象界は分化が行われる一方、これに反して逆分化が行われる。
 つまり、かつて千島喜久男医学博士が説いた「赤血球の分化説と可逆分化説」によれば、細胞が血球に戻り、変質した細胞は正常化されていくのである。
 この正常化の善導を勤めるのは、つまり、未精白穀物である。

 現代という時代は、「食べ合わせ」によって、種々の難病・奇病が発症し、その根本的な元凶は、「肉と野菜の食べ合わせ」の相尅にある。この相尅が、第二級アミンと亜硝酸が反応を起こし、ニトロソアミンを生成させているのである。

 これを予防し、阻止し、停止させる為には、「天の配列」による玄米穀物の正食を実践する以外にないのである。
 ちなみに、現代栄養学は玄米に含まれる食物繊維のフィチン酸がカルシウムの吸収をさまたげるとしているが、このフィチン酸こそ、発ガン性物資との進行を阻止し、このフィチン酸は、アルカリ性条件下で非常によく働き、放射能などの公害物資とを排除すると共に、重金属やその他の発ガン性物質と結合し、腸から除去する性質をもっている。

 その結合率は、pH7(中性)では80%であり、pH8(アルカリ)では100%と云われている。
 玄米を正食法として摂取していると、喩え公害物質や発ガン性物質が血液中に吸収されたとしても、玄米には強肝・強腎効果があり、これらの有害物質は速やかに解毒され、排泄されるのである。玄米の構造や主栄養素を分析すると、次世代の種子を誕生させる玄米には、もともと有害物質の作用を撥(は)ね除け、生命活動を健全に押し進める能力を持った、優れた食品と言える。

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