現代人はなぜ成人病になるのか 3
●不夜城・日本の実情

 OR反応と適応反応を何度も、過激に繰り返すと、神経系ならびに内分泌腺系統に負担をかけ、他の病気に罹(かか)ったり、身体を不調にしてしまうのである。こうした状況下で、現代人を危険に曝(さら)している行為が、遅い時間の食事等で、夕食を午後9時以降に摂る人は、それ以前に夕食を終えてしまう人と比べ、腰痛に罹(かか)り易い。
 椎間板(ずいかんばん)ヘルニア【註】ギックリ腰のことで、腰痛捻挫状態を云う)や、股関節を亜脱臼させて、坐骨神経痛などに罹(かか)る人は、その原因が、夜遅い夕食である。

腰骨の名称。食事をし、満腹状態になると腰骨の仙骨関節や恥骨関節が開いて弛む。特に仙骨は、柱の下端部すなわち腰部にある二等辺三角形の骨で、ここは5個の仙椎の癒合したもので、尾骨と共に骨盤の後壁を作る骨である。また、恥骨は腸骨・坐骨と癒合して寛骨(かんこつ)を作り、その下半前部を構成する骨である。

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 坐骨神経痛は、一般には、腰椎下部の椎間板ヘルニアなど脊椎(せきつい)の障害によるものと考えられているが、これはそれだけではない。股関節が重度の亜脱臼(あだっきゅう)をし、関節が外れたままの状態で放置されるからである。そして、多くの場合、この儘で股関節の蝶番(ちょうばん)が固まってしまう。坐骨神経の経路に沿って感ずる疼痛であるが、臀部、大腿後面から下腿後面、さらに足部にかけて圧痛点があるのは、「股関節の亜脱臼」が疼痛(とうつう)の原因になっている。

 これは遅い夕食により、骨盤が弛(ゆる)んだり、股関節部分の関節が弛み、開くからである。その上に、ストレスが加わり、脂肪代謝に拍車が掛かる事になって、脂肪代謝は、ある種の糖尿病に重大な問題を引き起こすと云われている。

腰骨は食事と共に開閉する。また、夜の9時過ぎの遅い夕食は、腰骨を緩めるだけでなく、寛骨(かんこつ)は腰部で背骨と下肢との連結をなす骨で、股関節接合部が亜脱臼(あだっきゅう)を起す。腸骨・坐骨・恥骨の三つが癒合したものであるが、この部分の接合部の関節が亜脱臼を起すのが、坐骨神経痛になる病気の正体である。大腿骨の上端部を入れて股関節を形成する寛骨側の凹部で、「寛骨臼(かんこつきゅう)」という。

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 人間は、食餌をすると満腹状態になって骨盤が弛む。多喰い傾向にある人ほど、骨盤の関節は弛み易い。
 こうした原因は、「夜の遅い夕食」である。あるいは「深夜の夜食」である。一日5食主義や4食主義が、日本人の心と身体を蝕んでいる。

 腰痛の病因は、大腸の疲弊(ひへい)と腸内に残留する腐敗物が「腰痛」となって顕われる。そして一番大きな病因は、午後9時以後に食べる「遅い夕食」である。あるいは「夜食に近い深夜の夕食」である。寝る前の食事は、胃腸を疲弊させ、胃腸疲労性の腰痛や冷え症を齎(もたら)す。

 まず、腰痛には二通りがある。
 一つは、年齢と共に腹筋が弱り、骨盤が前方に引っ張られ、仙腸関節(せんちょうかんせつ)に狂うが生じて腰痛になる場合と、もう一つは、尻部の筋肉や背筋が弱って垂れ下がり、腰が前に曲がって腰痛になる場合である。そして両者に共通していることは、骨盤が歪(ゆが)み、躰(からだ)の骨格全体が、アンバランスになっていることから起る。
 特に左右のアンバランスは、歪(ひずみ)みから腰の状態を不安定にさせる。

 こうした病因は、大腸の働きの低下が挙げられる。
 大腸の機能が低下する要因は、大腸内に溜まっている、本来ならば排泄されなければならない老廃物である。毎日便意を感じ、きちんと排便されて居る人でも腰痛になるが、排便しても、「すっきり感」がない人は、腹部が張っている感じが残り、違和感が消えない場合は、既に腰痛に兆(きざ)しがある。
 こうした状態で、少し腰を捻(ひね)ったり、前屈みになった状態でも、椎間板ヘルニア(ギックリ腰)になったりする。これは骨盤が関節が弛み、開き放しの状態から起る。

 この病気は、まず大腸の疲弊(ひへい)が挙げられる。大腸が疲弊する最大の原因は、「夜の遅い夕食」である。
 人間の骨格は、一日の周期をもって生活を制御している。つまり、頭蓋骨(ずかいこつ)、肩胛骨(けんこうこつ)、骨盤、肘関節や膝関節、脊柱(せきちゅう)などの骨格部は、一日の周期を以て開閉作用を行っている。

 例えば骨盤を挙げると、骨盤が開いた時に睡眠状態が訪れ、睡眠中は骨盤が締まる作業が始まる。そして骨盤が締まり切った時に、目が覚める。
 人間は異化作用と同化作用が昼と夜で異なるように、骨盤を含めた肩胛骨(けんこうこつ)や頭蓋骨(ずがいこつ)も、昼と夜で一定の周期をもって開閉作用を行っているのである。

 人間は、午前中に骨盤が締まり、午後からは開きはじめる。また、空腹だと骨盤が締まり、胃の中に食べ物があると、骨盤は開く生理作用が現われる。したがって、午後7時過ぎに食べ物を入れると、骨盤の締まりが兇(わる)くなり、朝起きても骨盤が弛(ゆる)み切っているから、椎間板ヘルニア(ギックリ腰)が起るのでのである。これは夜遅く食事をする事と無関係ではない。腰痛や肩凝りは、これが元凶である。

 腰骨の正常な状態と云うのは、骨盤が引き締まり、仙腸関節を引き締める筋肉がしっかりしていることである。

 しかし、人生は試煉(しれん)の場であり、日々いろいろな体験をしなくてはならない。人との付き合いもあるであろうし、宴会などの社交の席で、暴飲暴食をしたり、夜遅くまで飲み食いしなければなら実情があろう。また、小腹が空いて、食事時間以外に間食したり、夜遅くの夜食をしたりと、過食状態に陥り、腹部には「締まり」が失われる。その為に「腰骨」が無防備になある。

 骨盤を引き締める仙腸関節を引き締める筋肉は、睡眠中に引き締められるのですが、夜遅く食事をすると、腰骨全体が弛み放しになる。
 人間は食事をすると、緊張が和らぎ、腹部の筋肉が弛むので、骨盤を引き締める成長関節の筋肉も弛み、腰骨全体が弛む。この「弛み放し」が腰痛を齎(もたら)すのである。腰骨は睡眠中に締まる作用をするのであるが、夜遅く食事をすると、あるいは食べて直ぐ寝ると、睡眠中に締まる筈(はず)の腰骨が締まらなくなる。

 本来ならば、朝起きた時に締まって居なければならない腰の筋肉が弛んだままになっていて、こうした状態で作業をしたり躰(からだ)を動かしたりすると、即座に「ギックリ腰」という病因が派生する。その上に、排泄物が腸内で腐敗して残留している為、更に悪循環を起る。
 とにかく、夜、遅くに食事をしたり夜食をしたりして、その後、直ぐに寝てしまうと、骨盤の筋肉を弛めることになり、これに更に絡んで暴飲暴食が悪循環に輪を掛ける事である。
 つまり、腰痛とは、飽食の時代の「食事の間違いから起る食事病」と言えよう。

 食事の間違いを冒すと「食傷」という状態が顕われる。この食傷の大きな起因は、現代日本人の食事が欧米化したことによる。特に日本人は、昭和30年代の高度経済成長期を機転として国民の生活水準が向上し、食生活が裕福になって肉を中心とする動蛋白摂取により、「食傷」という病因が浮上し始めた。

 更に「食傷」に輪をかけた悪循環は、日本人が明治維新以降、生活の欧米模倣化に伴い、動蛋白摂取が盛んになり始めたのであるが、残念ながら日本人の食文化の中には、「肉を食べる文化」も、「肉を食べる知恵」も、全く存在しなかったと云うことであろう。つまり、これは新奇性による、「環境の変化」だったのである。

 いま現代人の身体は、それぞれが新奇性の対応不充分となって、自分勝手に狂った方向へと突き進ませている。
 一日4食主義はおろか、朝・昼・晩その間の間食や、深夜の夜食まで入れると一日5食主義となり、大きな食傷を作り出し、完全に現代人の脂肪代謝機能を狂わせ、ある種の悪性の糖尿病へと導き、その上に複雑な人間関係や急激な新奇性を伴う環境変化などは、現代人を間違いなく、奈落の底の、滅びの病の中に突き落としていると言えよう。

 こうした情況下での、ストレスの派生である。食生活の欧米型への変化、少子化で家族構成が核家族化する変化、老人は養護施設へと捨てられて行く「姥捨山」への流行、職場や赴任先での変化、現代社会は変化の連続で新奇性が襲って来て、現代人は新奇性に適応しようとして、様々なストレスを現代社会の環境の中で体験し、それを生活の中に持ち込んでいるのである。

 また加速度が掛かる現代社会の状況は、科学的・技術的・社会的変化のペースが速まる事で様々な新たな問題を派生させ、人間の体内の化学物質と生物学的安定性において、こうした変化から起る新奇性が、更に現代人を混乱の渦の中に巻き込んでいるのである。
 もうそして、現代社会に生きる総ての人間が、絶えずストレスとは無関係に生きる事は不可能になったと言えるであろう。更に、適応反応をまともに受ける、反応適応能力にも限界があると云う事だ。

 人間は変化を受け入れる能力には、自ずから限界があるという事である。人間と言う生き物は、限界のある生き物なのである。もしこの限界を超えて凄まじいストレスが襲った時、人間は病気に罹りやすい体質になり、これこそが、現代人の未来を暗くしている一面である。
 そして、こうした衝撃が、ガン発症や糖尿病や高血圧を、次から次へと発症させているのではあるまいか。



●ストレスが免疫力を弱め、恐怖のガンを作り出す

 ガンを始めとする様々な生活習慣病(成人病)は年々増加の一途にある。またそれ以外でも、現代医学では中々完治し難い難病や奇病が、他にも沢山ある。そして、生活習慣病の元凶と言えるのが、身体の細胞を弱らせ、錆(さ)び付かせる「活性酸素」である。

 これを抑制し、除去できる抗酸化物質を人間は生まれながらに所有しているが、近年の現代社会の変化や新奇性は凄(すさ)まじく、生活環境が徐々に悪化している。また、こうした元凶になっているものが、食生活の欧米化であり、動蛋白や乳製品などの摂取過剰や、食品添加物などによる、体内に活性酸素を大量に作り出す悪循環が起っている。こうした状況下では、「抗酸化物質」の生産が追い付かない。

 活性酸素の元凶の一つは、繰り返し述べてきたストレスであり、しかし現代の競争社会や情報化社会に生きる現代人は、こうした環境から抜け出す事は殆ど不可能であろう。

 この状況下にあって、更に環境ホルモン、酸性雨、ダイオキシンなどの化学物質の発生、また、世界規模の地球環境の悪化など、これらの悪循環と促進要因が絡んで、「活性酸素の害」が急速な勢いで拡がっているのである。
 現代を散り撒く環境は悪化の一途を辿り、人間が健康に生きる事が非常に難しくなった時代と言えよう。

 こうした実情の中で、いま注目を浴びているのが「自然治癒力」を高める体質改善法である。
 つまり、かつて石塚左玄が提唱した「夫婦アルカリ論」の考えに則り、カリ塩とナトロン塩の差異をしっかりと把握し、「正食」を志す事である。「正食」を実践する事により、本来の人間の持っている自然治癒力を高めて、これまでの西洋医学一辺倒主義から、自然治癒力を重視する体質改善法の健康維持である。

 まずその為には、現代人にのしかかる過剰なストレスを解消しなければならない。
 病気の80%は「ストレスによって引き起こされている」といわれている。事実、生活習慣病と云われる、ガン、高血圧症、心筋梗塞、糖尿病、胃潰瘍などは過剰なストレスが原因であると云われている。
 最近では、ガン発症とストレスの関係がクローズアップされ、大きな悲しみがあった後や、生活環境に衝撃が奔るような出来事があった場合は、非常にガンになる確率が高いと云われ始めた。

 例えば、長年連れ添った配偶者に先立たれるとか、離婚したとか、思わぬ不幸に見舞われたとか、こうした不幸現象に襲われた時にガンに罹(かか)り易いといわれている。
 これまでは飲酒の習慣がある人が、肝臓ガンになり易いとか、喫煙者は肺ガンになる確率が高いとか、こうした事が云われて来たが、この影響は非常に小さく、結果的には殆ど医学的な根拠がなかった事であった。むしろ、ガンに罹り易い人は、睡眠時間も充分にとっていて、一見健康で、よく食べ、几帳面で、そのくせ、神経質で心配症な人は、幾ら注意をしていても、ガンになる事が多いと言うことが解って来た。

 ガン発症者の心理状態や行動面の特長などを追跡調査すると、責任感や仕事重視の考え方が、「自分がいま何をしなければならないか」と言う事を最優先させ、ある程度仕事がよく出来、自分の所屬する企業に忠節で、常に営業成績を気にし、周囲と意地になって競争意識を張り合い、他人の眼ばかりを気にし、評判を気にして行動する人ほど、ガンになり易いと言う研究報告が出ている。
 つまり、仕事への適応力があり「神経質」で、「八方美人」を決め込む人ほど、「ガンになり易い」ということである。

 そして、このタイプの人は、心の深層心理の中で、「ガンは、自然治癒しない死病」と思い込んでいる事が、ストレスからガンに移行し、ガンが発見され、告知でもされようものなら、「自分は近いうちに、ガンで死ぬのではないか」と、前途を悲観する事である。

 このような疑いを持った人は、その殆どが、「ガンで死亡している」ということなのである。

 こうしたガン発症の、「ガンを喰い物にする商売」は、日本人の律儀で几帳面な心理状態に絡め捕られる為、非常に儲かっていると言える。
 ガン摘出をする外科医を始め、これに絡まる抗ガン剤などを提供する薬品産業、レントゲン技師らは、こうした几帳面で神経質な、仕事への適応力のある、規則正しい正直な人間を相手にしてのであるから、この手の人間を脅せば、生涯、食い逸れがないという事である。

 そしてこのタイプの人は、確実に医療費を払い、また、自分の家や土地を処分しても、確実に医療機関への支払と奉仕は不履行しない。非常に律儀で、一日も送れることなく、完納するのである。その上、一時的にもガン疾患が好転すれば、医師や看護師やそのたの病院側で世話になった人への挨拶は、実に御丁寧で、決して下には置かないのである。

 昨今は、総合病院などが経営危機の状態にある。それは極貧患者が、医療費を納められずに、黒字倒産と云う危機に見舞われている。また、極貧者は国民健康保険料も納められない、貧困の経済状態にあり、払いたくても払えない状態にある。こうした患者を抱えた病院こそ哀れである。

 ところが多くの病院が経営難にありながら、その一方で一番威勢のいい病棟や病院がある。ガンを専門に扱う病院である。ここだけは現代の「ガン脅し」の追い風に乗って、年中不景気知らずである。その理由は、律儀な神経質のガン患者を大量に抱えているからだ。

 この律儀タイプは、いつも規則正しい生活を送り、分刻みの生活習慣を守り、周囲の人の眼を気にしながら生きている。殆ど趣味ももたず、仕事に打ち込み、家庭内では結婚当初から、家事を夫婦2分割して平等にそれを全うし、妻君の受もよく、表面的には夫婦円満である。一身に仕事に打ち込み、仕事への適応力も高く、更に家庭に帰れば、家事や料理もこなすと言う見掛け上のスーパーマンである。

 しかし、このスーパーマンにも弱点はある。うまく気分転換できないのである。このような人は、慢性的ストレス症状態に陥り易く、ガンに罹(かか)った場合、全く自然治癒力が働かない。
 一度、新奇性から「OR反応」「適応反応」が起ると、ガンを防ぐだけの体質がなく、免疫細胞の働きは低下状態にあり、ガン細胞の増加を防ぎきれない。更にこのタイプは、会社での受がいいだけでなく、家庭での受もいい訳であるから、妻君の注文には、話が聞き上手で、物分かりのいい亭主のポーズを執(と)る。

 妻君が何処かの女子大の栄養学部などの出身者である場合、「肉と野菜のバランスを考えて、肉もしっかり食べるのよ」と、現代栄養学の立場で諭(さと)されれば、この律儀な亭主は、「ああそうなのか」と何も疑わずに、野菜を摂り、肉を食べ、牛乳などの乳製品も規則正しく、決まった量を摂取しようとする。しかし、既にこうした妻君の食事の強制も、仕事ができると自負しているポーズも、その実は重くのし掛かり、多大なストレスを感じているのである。かくして、ガンを発病すると言う図式が出来上がり、ついにはガンを「商売の種」にしている医療屋や薬屋の餌食(えじき)になるのである。

 そしてこのタイプの人は、ガンを告知され、ガンで療養入院すると、その後の生き甲斐は見出せなくなり、消極的な思考に固まった、「確実にガンで死ぬ」というコースを辿るのである。
 これはガンが、その人に取り憑(つ)いて、蝕み、取り殺すのではなく、日頃のストレスの負担が積もり積もって、ガンへの免疫性が低下し、実際には治るものが治らなくなって死んで行くのである。
 こうしたガンへのコースを追うと、ガンは自分で作り出している病気であると言える。



●病気を治す主体は、患者自身

 過剰ストレスは、現代栄養学の食指針に随(したが)い、幾ら栄養を取ろうが、健康に良いといわれるストレッチなどの運動をしようが、全く遠慮なしの襲って来る。そして、これが習慣性になると、要注意である。
 此処までくれば、現代栄養学の基礎知識力では無力になり、即効性のある、救急医療には強い現代医学であっても、慢性病が堆積して起るガン発症には、全く威力を発揮しないのである。

 特に、ストレスが免疫系の破壊に与える悪影響は大きく、普段の積もりに積もった些細(ささい)なストレスは、或る日、突然猛威を振るい、ガン発症に変貌して襲い掛かって来るのである。
 ストレスをコントロールし、これを管理できない新奇性の影響を受け易い人は、最悪であろう。

 こうした状況は、「ネズミの過剰状態での飼育」で、既に研究結果が発表されている。ネズミの過剰状態とは、「東京や大阪などの過密都市で」というふうに置き換えてもいいであろう。
 こうした状態でネズミを飼うと、ネズミは過剰なストレスを感じ、ガン細胞を撃退する抗体細胞が激変し、正常細胞の活性は三分の一に減少するといわれている。

 これは資本主義の競争社会で、過当競争を強いられるサラリーマンも、ネズミの過密化と寸分の違いもないだろう。そしてこの人が、中高年の年齢で働き盛りで、中間管理職以上の責任ある地位に就き、仕事が良く出来て、部下を遵(したが)え、陣頭指揮を執(と)っている場合、この人に懸(かか)るストレスは相当なものであろう。
 この人の免疫力は確実に低下し、周囲の環境圧迫は、ストレスにより、ガン細胞に対する抵抗力は確実に弱められ、仕事で、喩(たと)え「勝ち組」に入っても、自分の肉体でその代償を払う事になるであろう。
 これがこの人に襲い掛かる「第一期襲撃」である。

 次に、この人が「勝ち組」の名を恣(ほしいまま)にしている人も、一度躰(からだ)に変調を訴え、何らかの生活習慣病と診断され、最悪の場合、ガンになって、化学療法としての抗ガン剤、外科的摘出手術を受けたとしても、それらは直接的な、病気治療の極め手にはならない事を思い知らされるであろう。
 それはガン撲滅の為の抗ガン剤投与や、執刀医がメスを執る摘出手術は、単なる病気を治す為の手助けでしかないからである。つまり、医師側は補助的な役目しか負わないのである。

 そして特記すべき事は、一人のガン患者が五年生存率で視(み)て、ガン発症から五年未満で死ぬまでの、医療機関に支払う医療費は「一人平均500万円強」といわれている。また、この医療費は加療入院などを含まない金額であり、その間の集中治療や手術およびその他の治療法によっては、軽く1000万円を超えるともいわれている。

 こうして考えて来ると、ガンにも簡単に、患ってはいられないのが実情であり、家族の中から、一人のガン患者が出ると、一時的に治ったとしても、その後に再発し、五年死亡率で視た場合、この間の五年未満に支払う医療機関への経済負担は相当なものである。
 例えば末期患者の場合、子供が高校か大学に通っている場合は、それらの学費が払えなくなるので、中途退学する事やむを得なくなり、マイホームがあっても、それを処分しなければならないくらいの経済的負担が懸(かか)るようだ。それでも、まだ治る患者はいいだろう。
 しかし、あれこれと医師からいじくり回され、結局、無駄に終る加療医療費分の支払いを迫られて、副作用で苦しみながら死んで行く末期患者は、実に哀れである。

 途中経過に好転が見られず、次の手段として、幾ら主治医が新たな治療法を薦めても、ガンを克服するのは治療者側にあるのでなく、患者側にあるのである。病気を治す主体は、ガンになった患者自身であり、患者の持っている免疫力が、頼りに足りるものでなければ、患者のガンからの生還は望めないであろう。

 免疫力が卓(す)ぐれているという事は、「体質が良い」ということであって、体力があるという事ではない。自然治癒力が働くと言う事と、体力があるという事は別問題である。自然治癒力が、ガン細胞より勝っていると言う条件は、体力があるという事ではなく、「体質が良い」という事である。

 本来、私たちの身体に備わっている抗酸化物質である免疫力は、体内のガン細胞に対して、有効的な抑止力を持ち、免疫力が働く条件とは、心理状態が何ものにも大きく左右されないという条件下である。

 したがって、病気を治す主体にある者が、「ガンノイローゼ」の欝(うつ)状態にあったり、深い悲しみの真っ只中にあったり、家庭の内外で心配事があったり、運命共同体の中で人間関係がしっくり行かなかったりすると、免疫機能は低下し、こうした「欝状態」が患者を苦しめ、治るものも治らなくなり、その死亡率は、欝状態とそうでない者との比較差は約2倍以上といわれている。

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