●ストレスの元凶を作るOR反応
人生の半ばを過ぎての離婚とか、配偶者の死亡とかは、環境下の急変によって齎(もたら)されるが、他にも、転勤とか、休暇の過ごし方によっても、急変を齎す事がある。
現代人は日常生活の中で、小さな出来事の流れの中で生活を営んでいる。その変化の度合いは小さく、概ねは急変と云うような、「非日常」を感じさせるものではない。だが盲点は、「小さな日常」の流れにこそ、大きな盲点が潜んでいる。
何故ならば、どのような「大きな変化」も、実は小さな変化の集積であり、その変化が積もり積もれば、或る日、突然大きな変化となって顕われるからである。そして、その小さな変化が、更にそれより小さな変化を齎し、それが全体量として大きな変化になっている事に、或る日、突然、堰(せき)を切ったように顕われて来るのである。
現代人は、こうした日頃からの小さな変化に、薄々はその気配を感じ取りながらも、それが「大変化に向かって移行している」と言う、マクロ的な全体像を見抜く訓練に慣れていない。また、現代社会が高速で動き、これに加速度が加わっている現実に気付いていない。
したがって、私たちの環境を取り囲む一部の変化が、全体に対してどのような影響を与えるか、全く予測不可能な状態にある。
この変化を伝えるものに、眼に訴えて来る信号、あるいは耳に訴えて来る鼓動、更には肌に訴えて来る痛感がある。こうした訴えて来る信号は、常に決まりきった感覚で、決まりきった周期で、私たちの感覚器に訴えを起すが、繰り返しながら送られて来る信号を聞き逃した時、感覚器を通って神経系統に入り込んでいる信号の型は、何かを悟った時に修正される事になる。
修正された後の、決まりきった反復的な型は、修正により一時中断されてしまう。そしてこうした状況下で私たちは、激しい反応を示すものなのである。これが特に「新奇性の反応」である場合、何か新しい一組の刺戟が与えられ、それを感じる身体は、頭脳的にも直感的にも、それ等を新しい刺戟の媒体を認識してしまうのである。
この時に小さな変化の集積は、大きな変化の顕われとして、肉体に異常反応を起すのである。
どのような変化であっても、それが起ると、極めて広範囲に身体の機能に及び、それが作動し始めるのである。
これは犬の条件反応の実験などを検(み)ても明らかであろう。犬は、今まで聞き慣れない音を耳にすると、耳をそばだてる習性がある。また、犬は音に向けて首を向ける。
これと同じ動作は人間の場合にも起る。刺戟が変化すると、その刺戟に対し、準備動作の反応を起す。準備動作の反応を、OR反応(Orientation response)と云い、これは複雑にして極めて大掛かりな身体動作となる。
こうした反応が顕われる場合、まず瞳孔(どうこう)が開き、光化学的変化を起し、一方聴覚は瞬間的に敏感となる。その際、筋肉は無意識に動き、与えられようとする刺戟に対し、感覚器は防禦態勢に入る。
まず、音のした方に首を向け、それをもっとよく見ようとして、眼を一杯に見開こうとする。これが自分の危害を加える媒体であれば尚更である。
全体の筋肉に緊張が奔(はし)る。脳波の型に変化が顕われる。手・足の指は、そこを流れる動脈と静脈の収縮によって冷たくなり、掌(てのひら)は汗ばんで来る。
更に、血液が頭に上り、呼吸も荒くなる。変化の量が増大し、大変なストレスが発生する。
また一方、環境の中で新奇なものが殖(ふ)え過ぎると、身体中にアドレナリンが働き、心臓の鼓動が高まり、掌は冷えきり、筋肉は硬化し、細かく震(ふる)えるようになる。こうしたOR反応は決して偶然的に起るものではない。そしてこの反応が起った時、人間の身体はくたくたに疲れてしまう。
こうした場合に陥った時のエネルギー消費量は非常の大きい。
もし、病気を迎え撃つ体質が悪く、五十の五十路(いそじ)を過ぎ、人生の折り返し点を曲がって、体力も低下した状態にある時、人間は多量の予測的エネルギーを消費する事になる。特に、性格的に心配症の人であれば、これは甚だしい消費量になるであろう。
準備動作を完了させる為のエネルギーは、普段は筋肉や汗腺のようなところに蓄えられている。この状況下の神経組織は、外界の新奇なものに対し、作動すると、その神経装置は少量のアドレナリンと、ノル・アドレナリンを分泌する。この分泌により、蓄えられたエネルギーの一部を吐き出してしまうのである。疲弊(ひへい)とはこうしたところに派生する。
こうした反応は、新しく、珍しい情景や、奇妙な音にも同様の反応を起し、更に新しい情報に接した時にも起る。ゴシップなどもそうであり、これまでの統一的な概念が変化し、新しいジョークや、新しい用語を使わねばならなくなった時にも、人間はOR反応を惹(ひ)き起こす。
そして、これらは一見小さな変化でありながら、もし、その人が神の善意を信ずるように子供の時から躾(しつけ)けられて大人になった場合、突然に、とんでもない馬鹿馬鹿しい悪戯(いたずら)に遭遇したり、悪意を持った新奇性の自体が派生してその状況下に置かれた場合、この人は相当なストレスを感じ、神経組織に爆発的な大変化を惹(ひ)き起こしてしまう。
●ストレスから起る異常性腺刺戟状態
環境下で異変が起った時の非日常の新奇性は、回数が重なれば重なるほど、急激な反応への変化が起り、その変化進度には加速度がつく。
OR反応が常時働く事により、心臓はドキドキして負担がかかり、手は中風患者(半身不随で、腕または脚の麻痺する病気であり、脳または脊髄の出血・軟化・炎症などの器質的変化によって起るが、一般には脳出血後に残る麻痺状態をいう)のように、ブルブルと震(ふる)え出す。緊張が奔(はし)り、こうした緊張状態は、犬の条件反射のようになって、OR反応が起る度に顕われる。
しかし、これは緊張が消滅するまでこの状態が顕われるので、もし、この緊張が収まらなかったらどうなるのだろうか。
仮に複雑な肉体的な反応が起らなくても、微量に、こうした状態が長く続いたらどうなるのだろうか。
こうした反応は、人間社会での人間関係にもよく見られる。
例えば、会社内で自分の上司が毎日毎日細かいところまで一々口を出し、自分の仕事に嘴(くちばし)を入れて来たらどうなるだろうか。あるいは営業成績を一々取り上げて、それに注釈を入れ、不振な場合であったら、上司の罵倒は一体どの程度のものだろうか。
また、自分の家族の中で、夫人か子供の何(いず)れかが、重い病気に罹(かか)っているとしたらどうなるであろうか。
あるいはそれと正反対に、素晴らしい一日の、大型の取引の商談が決定したり、思わぬ喜び事が舞い込んで来たらどうなるだろうか。また、それを受けて、有頂天に舞い上がったはいいが、その後、何事も変化の少ない平凡な人生に引き戻されてしまったら、一体この人はどうなるだろうか。
並みの人間は、OR反応がドッと襲って来るエネルギーは、そう簡単には扱いきれないのである。こうした突然の変化に対し、これに取って代るのが「適応反応」である。
適応反応はOR反応に非常によく似た関係にあり、このプロセスは別々のものであるが、両者は複雑に絡み合っている。つまり、OR反応は、それより大きな包括的な性質を持つ適応反応の一部でしかないのである。初期の一局面と看做(みな)されるのがOR反応である。
また、OR反応が神経組織に基づく反応であるのに対し、適応反応は内分泌腺と血液の注ぎ込むホルモンと深い関係を持っている。人間の防衛作用については、第一の防御ラインが「神経組織」で、第二の防御ラインが「ホルモン」なのである。
人間は新奇的なものに対し、繰り返し反応する事が強(し)いられ、人間関係において、争い事や不安が生じる事態が発生すると、これに適応するように反応後、脳下垂体の前葉からは成長ホルモン・生殖腺刺激ホルモン・甲状腺刺激ホルモン・副腎皮質刺激ホルモン・黄体形成ホルモンが、中葉からはメラニン細胞刺激ホルモンが分泌され、後葉からは視床下部でつくられた抗利尿ホルモン・子宮筋収縮ホルモンなどが貯えられて分泌される。そして神経系と内分泌系とは、連接部で共有を為(な)している。
この中の一つには、ACTH(adrenocorticotropic hormone/副腎皮質刺激ホルモン)というものがあって、これは副腎へと濺(そそ)ぎ込まれる。またこれは、脳下垂体前葉から分泌され、副腎皮質の発達と機能とを刺激するホルモンである。このホルモンは副腎に到達すると、コルチゾール(Cortison/コーチゾン(cortisone)とも呼ばれ、副腎皮質糖質ホルモンの一つ)と呼ばれる化学物質を作る。
この化学物質は、蛋白質からの糖新生を促進するほか抗炎症、抗アレルギー作用を呈し、リウマチ・膠原病(collagen disease/ 皮膚・筋・関節などの結合組織に炎症・変性が起り、膠原線維がふえる慢性疾患)などの治療に用いるが、過剰に分泌または投与するとクッシング症候群(アメリカの脳外科医クッシング (H. W. Cushing)の名に因む。副腎糖質コルチコイドの過剰により生ずる病症。躯幹の肥満、満月様顔貌(ムーン・フェース)、高血圧、多毛、糖尿、皮膚線条、骨粗鬆症などを呈する。副腎腫瘍、異所性ACTH産生腫瘍、ステロイドの長期投与などにより発症する)を起す危険性を持っている。
この化学物質が副腎から分泌されると、新陳代謝が速まり、血圧が上がる。傷口があればその箇所を化膿(かのう)させないように、血液を通して、抗炎症性物質を送り込むのである。
また、この化学物質は、脂肪とタンパク質とを実際に使えるエネルギーに変換させる働きがあり、身体の中にあるエネルギー貯蔵タンクの中のエネルギーを引き出す役割をする。
このように適応反応は、OR反応よりすっと強力で、長時間、長続きするエネルギーを供給するのである。
現代人達は、僅か一日の中で、肉体的社会的環境の変化で、数え切らないくらいのOR反応を起し、適応反応を起している。この適応反応は、ストレスと云う名で呼ばれ、一般には劇的な名で知られている。そして、これを「適応症候群」という。
これはストレスに対して、躰(かだら)を適応させる為に、体内で起る一連の症候で、セリエ(Hans Selye/カナダの医学者で、ストレス学説を主張した。1907〜1982)の提唱した概念である。
ストレス概念によると、第一期の「警告反応」に続いて抵抗期に入り、副腎皮質機能の亢進による糖質・蛋白質・塩類の代謝の変化が起って防衛体制をつくり、ストレスが、なお継続すると、副腎皮質は疲労に陥り、疲憊(ひはい)期に移行することは既に述べた通りである。
こうした段階への移行は、現代人を取り巻く心理的社会風土が、推移や変化によって惹(ひ)き起こされ、その元凶となるのは、心配事、狼狽、躊躇、いざこざ、不安、不信、不眠、喜怒哀楽、一喜一憂、有頂天、享楽、悦楽、性への戲(たわむ)れの喜び、喜悦などであり、これらがACTHなる化学物質を作り出すのである。
人間社会では、「変化が起るのではないか」と言う期待だけでも、適応反応を引き起こすのである。
例えば、近いうちに地震が起るのではないか。大型台風が自分の住んでいる地域を襲うのではないか。あるいは地震や台風により、大きな被害を受けて、罹災者になったが、避難所や仮説住宅などでのストレスにより、体調不良を起すエコノミック症候群で、心身の状態が狂うのではないか。それが原因で心因反応が起るのではないか等の、明日への不安である。
また、子供を遠方に旅行に行かせたが、事故に遭遇せず、無事に帰って来るだろうか。自分が会社内で、リストラの対象になっているのではないか。明日も平和な日常生活が送れるだろうか。明日の会議は自分が担当するのだが、無事に終える事が出来るだろうか等であり、こうした不安を一々挙げても、もう既に、適応反応が始まっているのである。
更には、今までの仕事に終止符を打ち、新たな職に就いたり、職場の配置転換があったり、赴任したり、家族の一人が遠地に出たりと、社会的かつ環境的な変化が起り、これ迄の生活方法が変わった場合も、即、適応反応が起る。
また、これまでの生活方法を修正して、新規にやり直す事でも、適応反応は起る。実際には、今までに経験しない、未経験な事象と直面しただけでも、適応反応が起り、既にストレスが始まっているのである。
人間は、感情的風土とか、対人関係に変化がある場合は、それが喩(たと)え、ごく小さなものであっても、環境の変化に馴染めない、並み程度の日常生活を送って居る人は、環境の事態が一変し、「非日常」となった場合、大きなストレスを感得して、体内には著しい化学物質を分泌させ、ストレスを起して、コルチゾール(あるいはアドレナリンやノル・アドレナリンなど)の量を激増させると云われる。
●現代は性的に狂った時代
競争が激しい環境下とか、人間が密集する環境下での仕事とかの、変化の激しいところでは、ホルモン分泌は激しく変わって行くものである。こうした変化状況は、血液とか尿の中に、変化の度合いが読み取れると言う。
人間関係が複雑な場合、こうした変化に少し触れただけで、ひとりでに内分泌腺系の全体が刺戟され、ストレス症状を起すと考えられている。
生理学の観点から云うと、内分泌腺系統を常時刺戟し続けると、その組織体はそれがずっと生きている間、刺戟状態が続き、生理学的な影響を受けるとされている。
つまり、動物の体内を何らかの方法で、長期間刺戟し続けると、強烈なストレスが起り、その動物は「性的に狂って来る」ことが既に臨床研究によって確認されている。
人間は激しいストレスや、長期間のストレス状態の環境に置かれると、性腺が刺激され、異常性欲が起るのである。
この事は、先の大戦などでも確認され、前線基地の任務にあたる兵士が異常性欲により、敵地の婦女子を襲い、強姦や輪姦をすると言う心理状態は、洋の東西を問わず、歴史の中で証明済みである。昨今騒がれている「従軍慰安婦問題」も、こうした異常性欲が関わった問題である。
昨今は従軍慰安婦問題で、日本だけが世界から袋叩きの目にあっているが、この異常性腺刺戟は、日本人に限らず、欧米人も古い時代から確認され、彼等も巧妙なやり口で、強姦や輪姦をした事が歴史の中で認められている。日本人の場合はその遣(や)り口が下手で、正直であったから、露見したまでの事である。
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▲日本人経営の日本兵士を対象にした慰安所。
(【註】こうした従軍慰安婦が従軍?する慰安所には、強制連行された朝鮮人や中国人の婦女子ばかりでなく、日本の貧農層の子女から掻き集められた婦女子も相当数いた。従軍に従事する彼女達は従軍看護婦のような白衣を着て、医療施設のような医院を真似た所で、日本兵士相手に月給制で働いた。
そして一方、日本兵士は、まるで自分の身体の悪い箇所を診てもらうような感覚で、こうした所に気軽に出入りしていた。
写真は兵隊用の慰安所で、将校や高級軍人は、もっと豪華で贅沢な、高級娼婦がお相手するスペシャル設備が用意されていた)
日本列島という島国育ちの、戦略的視野が狭い日本人は、ヨーロッパや中国大陸・半島などの民族と異なり、「戦争」というものが、最後の最後まで本当に理解できなかった。先の大戦では、その後遺症が後々まで響いた。
本来、戦場には「現地掠奪(げんちりゃくだつ)」という非常識が常識となるのだが、戦争を知らない日本人達は、戦場にまで「律儀」を押し通し、何から何まで自前でやろうとした。その一つが、「従軍慰安婦」であった。
また、この従軍慰安婦的な考え方が、当時、中国大陸や朝鮮半島に、満洲国という「砂上の楼閣(ろうかく)」を築こうとした要因になったが、これは明らかに幻想であった。しかし、この「幻想」の教訓を破って、今日でも日本の一流商社は、再び、中国大陸に東南アジア諸国に、同じ過ちの「砂上の楼閣」を築こうと、徒労努力をしている。
歴史は繰り返すと言う。日本人の頭上に於ては、その思考回路の中で、間違いなく歴史は繰り替えしている。その意味で、多くの日本人は、曾(かつ)ての教訓を歴史の中から学ぼうとしない。元々そうした民族なのかも知れない。
近年でもエコノミック・アニマルの異名をとり、経済大国・日本を自称する、今日の商社勤めの日本人は、「転戦また転戦」の愚かしさを知らず、競争戦線において、曾て日本陸軍が犯したような誤りを、彼地(かのち)で繰り広げ、それが「砂上の楼閣」とも知らず、ストレスというプレッシャーをものともせず、せっせと幻想を作り上げている。
欧米人は、日本人に良い物を作らせて、これを安く叩いて買い上げる。しかし大陸人や半島人は、日本人に良い物を作らせて、その完成した暁には、これを作った日本人を追い出して、鐚一文(びたいちもん)払わず、タダで取り上げる。
曾て毛沢東は、「資本家のロープで資本家を吊るせ」と云ったが、これはまさに、彼の云う、「元手いらず」の最たるものではないか。
こうした、したたかさに、日本人の適応反応の繰り返しは、何処までこれに耐え、ストレスを解消していけるであろうか。
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問題なのは、戦争と云う状況下で、その戦闘に従事した戦闘員が、激しい緊張状態から起るストレスで異常性腺刺戟を受け、異常な性的興奮を受けることである。
戦争状態における異常性腺刺戟現象は、洋の東西を問わず、婦女子を強姦したり輪姦した歴史的事実があり、これを日本人だけが、こうした行為に奔(はし)ったと言う事だけを挙げて、日本叩きをやるのは余りにも片手落ちであろう。
ストレスから起る異常性腺刺戟現象は、人間ならば誰にも起きる事であり、これが宗教関係の聖職者であっても、大層な道徳家であっても、あるいは全く信仰心や道徳心のない、無教養な性格粗暴者であっても、その現象下では皆平等に、こうした現象が起り、万人共通に蛮行(ばんこう)を働く事だ。
例えば、何日も食事をしていない空腹者が、激しい食欲を覚えるように、激しい緊張からストレス状態にある者が、戦時下で、人間の持つ理性だけで対抗するのは非常に困難な事である。その為に、普段、家庭ではよき父であり、よき良人(おっと)である健康な壮年男性が、また、優しく懐(ふところ)の深い、思慮ある、よき恋人の彼が、激しい戦闘の最前線に赴き、緊張から、重圧的なストレスが掛かった場合、如何に知性があり、理知的と称される人でも、異常性腺刺戟からは中々耐えることができない。戦争が派生させるストレスとは、そうしたものだからである。
この「耐えられない」という現象は、今日でいうならば、東大を始めとする日本でも屈指の有名大学の最高学閥の大学出身者が、一流商社などで会社員として仕事に従事し、例えば中国や東南アジア方面などに、海外赴任・転勤・長期出張などになった場合、必ずストレスから起る異常性欲を満足させる為に、100%の確率で「女漁(あさ)り」あるいは「ホモ相手」を求めて、その地域の夜の巷(ちまた)を徘徊(はいかい)する。
あるいは役員の地位にあって、陣頭指揮をする重役ならば、曾て日本軍が従軍慰安婦を伴ったように、「女秘書」というオフイスワイフを、会社ぐるみで派遣・赴任させ、陣頭指揮者の「携行物」にする。
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▲高級料亭「武蔵野」。哈爾浜(ハルピン)では最大と云われた高級日本料亭だった。
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▲高級料亭「武蔵野」の大広間に、一堂に会した芸妓達は、遠地に派遣された日本軍高級軍人や高級官吏のお抱えの「女秘書」であり、また関東軍高級軍人や満洲国日本人上級官吏の「携行物」であった。総てストレス解消の道具にされた。(何れも毎日新聞社編・昭和史「日本植民地史」別巻1より) |
こう言う人は、日本に居る時、よき父であり、よき良人であり、よき恋人が、その後、日本に帰国した時、何らかの性病を背負った帰って来る事は、ストレスから異常性腺刺戟が起り、この現象に随(したが)ったまでで、その人の知力や、また理性とは一切関係ないのである。つまり、緊張状態が長引く環境下でのストレスは、今も昔も関係なく、また、洋の東西を問わず、末端の最前線に送られたものは、等しく「人間現象」を起すという事だ。
もし、ストレスにより、その地域の婦女子が強姦あるいは輪姦される事件が起った場合、異常性腺刺戟から婦女暴行(【註】昨今は異常過密状態の都会生活をしている者は異性に興味を覚えるだけではなく、同性に異常な執念を持つホモ同性愛者が急増しており、十代の可愛い美男を強姦する事件も増えている)が起るのであれば、「戦争そのものを憎む」べきであり、日本人だけを憎むのはお門違いである。
市街戦などにおいて、あるいはその他の戦闘行為において、自国民の被害を過大に感じ、自国軍の強姦や輪姦や銃殺などの行為は大目に視(み)て、これを不問にしてしまうのは、万国共通の傾向である。
そして憎むべきは、最前線に、徴兵で派兵された末端の無名の一兵士の行為を憎むより、戦争を開戦する「好戦的な国家」こそ、憎まれるべき存在である。
そして、人類は、戦争犯罪と無縁であったと言う軍隊は、歴史上一例を見い出すことができない。「聖戦」などあり得ないのだ。
ストレスが起ると、動物実験においても「共食い」する事や「同性愛」に奔るる事が確認されている。そして、これは何も男だけではない。女の場合でも、ストレスが起ると月経周期が不規則になり、また、動蛋白摂取過剰などが絡み、性的な狂いを見せて異常刺激が起る事が確認されている。昨今の家庭の主婦の不倫や、会社勤めのOLの上司との不倫は、この事を如実に物語っている。
普段は温和しくて慎(つつ)み深く、淑女の性格をもった婦人が、ストレスから異常性欲を見せるのは、これまでの専門機関の研究でよく知られている。
したがって、戦争状態の中では、空襲を受けたり、市街戦などで、自分の環境が戦闘状態に入った場合は、男に色目を使ったり、淫乱癖が出るなどして、性的な関係にルーズになって行くのは、これも一種のストレスからであり、分泌される化学物質によって、性的に狂うからである。
また乳飲み子を抱える婦人は、ストレスにより授乳期の乳の出が悪くなったり、あるいは乳の出が悪くなって、赤ん坊が愚図(ぐず)りはじめると、我が子を壁に投げ付けたり、上階から階下に落したり、暴力を加えるなどと云った、突拍子しもない行動に出る場合がある。こうした事件は、毎年何処かで、必ず起っている。
これは男の場合は、戦闘員であれば傲慢(ごうまん)になり、好戦的になって気が短くなり、手に持っている武器を乱射したり、武器で脅して服従させる。
こうした行動は、拳銃や刃物などの武器を携帯している、恐喝(きょうかつ)を働く暴力団員の傲慢(ごうまん)に、しばしば視(み)る事が出来、また大きなストレス負荷が掛かる場合は、脅(おど)しという行動に出て、婦女子に乱暴をしたり、弱い者に服従を強(し)いろうとする。何(いず)れもストレスが起因している。
要するに彼等も、勢力や縄張りなどの鎬(しのぎ)を削(けず)る、この渡世の一員である、此処にも抗争事件などからも分かるように、相当なストレスが掛かっているのである。
この事は、暴力団関係者の多くが、激しいストレスから、自分の人生の最期はガンを患(わずら)って死亡している事からも窺(うかが)い知る事が出来る。
また、非戦闘員の一般人である場合、やはり戦時下では同じように、性的に狂い易く、小心者ほど取り乱し、性的欲求も激しくなるが、それに反比例して精液の量と、その出方はめっきり衰え、遅漏(ちろう)状態になる者もいる。遅漏者は、心の引っ掛かるものが脳裡(のうり)にあったり、激しいストレスが加わる場合に遅漏となり、本人は激しいストレス状態にある事を物語っている。
一方、人口問題研究家や、生態学者などの研究者は、ネズミなどの動物実験を通じて、ストレスの激しいグループと、そうでないグループに分けて研究した結果、その実験例を公開している。
これによると、ストレスに曝(さら)されたグループは、曝されないグループに比べて、繁殖率が低下する事を挙げている。人間社会もこのように考えられ、文明国は未開国に比べて、ストレスが大きくのしかかる為、人口増加に抑止が掛かっている。発展途上国ほど人口増加は激しく、文明国ほど人口が減少する傾向にある。
人口密度が高く、人の群(むら)がりが激しいと言うのは、人と人の相互間作用が、高い水準に保たれ、したがってストレスが高い状態になっていると言える。こうした社会で生活をして居る人は、適応反応により、頻繁(ひんぱん)にACTHが分泌され、副腎に向かう化学物質が異常状態になっているのである。
こうした環境下では、副腎が肥大し、繁殖力が急速に低下しているのである。その為に同性愛に奔(はし)り、商業や技術の最前線で働くエリート社員達の昨今のホモ増加は、この事と無関係でない。
また、これまで心理学上では、女性の同性愛者は殆どあり得ないとされていたが、近年の報告では一流企業や時代の先端を行く企業の、いわゆるキャリアウーマンと云われる女性層に、同性愛者が急速な勢いで増えていると云う。この事は、女性も同様に経済優先社会の中で激しいストレスが掛かり、常時、適応反応が起っている事を顕わしている。
だが問題はこれだけに終らない。
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