千島喜久男の「赤血球分化説・可逆分化説」と
ケルブランの「原子転換説」 
 千島博士の「赤血球分化説」並びに「可逆分化説」は、物理学者・ケルブランの「原子転換説」と非常によく似たメカニズムをしています。


 千島学説の根底を流れる哲学は、一種の「逆戻り理論」を基軸に、自然やそこに生息する生命は総て輪廻の輪の如く、循環しつつ、それが波動と螺旋(らせん)的な動きをして、変化するということを定義にしています。

 また一方で、西洋の科学思想の中には「エントロピー増大の法則」(energie/ クラウジウスが命名した熱力学上の概念)と言うのがあり、可逆変化なら、エントロピーは一定で、不可逆変化では必ず増大するという「熱力学第二法則」です。
 この法則は、エントロピーの増加分と定義する概念で、熱は高いところから低いところに移動し、やがて平衡状態になり、均質になるという熱平衡の概念です。
 自然界は万物総てが、複雑から単純へ、無秩序から秩序へ、差別から平等へ、不均質から均質へ、時間の経過とともに移行していきます。

 この事から、宇宙の利用できるエネルギーは、同じように時間の経過とともに減少し、やがては宇宙全体が冷たくなると考えられています。そのため、時間は一方方向に向かい、決して逆戻りしない、と言うのが法則の根底にあり、自然科学はこうした考え方を基礎に据えています。一種の「死の法則」という事になります。
 ところが実際に自然界を考えますと、この法則が当てはまらない現象が起こっています。進化という現象は、この法則が当てはまりません。

 西洋科学の生んだ「エントロピー増大の法則」は、自然界の側面を支配するもう一方の法則であり、これはいわば「死の法則」というべきものです。
 それに対して東洋では、輪廻転生に見られるような「再生」という哲学思想があり、死んでは生まれるという法則があり、自然界は「生と死が一つになっている」という「生命発展の法則」があります。
 まさにこの「生命発展の法則」に、千島学説はその基盤が窺えるのです。

 人間は健康で体調の良好な時は、赤血球から総ての体細胞や生殖細胞への分化が可能となり、発展を続けます。いわゆる太り続ける、豊かな状態です。
 ところが栄養不良になったり、病気になったり、大量な失血があったり、食を絶って断食を行いますと、躰は痩せ細ってきます。
 こうした現象を現代医学では、脂肪や筋肉が消耗するからだと定義づけているようですが、千島学説はその実験結果から、この「躰が痩せ細る現象」を、「細胞が逆分化して血球に戻る」という学説を立てました。これが「赤血球逆分化説」です。

 これは「断食をする」という結果からも窺えます。
 断食を行いますと、まず、体質が変わり、若返り現象が起こります。
 また断食をしなくとも、節食や少食を実行しますと、やはり断食と同じように、顔色や肌の色が若々しくなっていきます。これは体細胞や生殖細胞が血球に戻ったということを証明するものです。

 現代栄養学は何でも沢山食べて、栄養分を取れば取るほど健康になり、躰も丈夫になると定義していますが、東洋思想に立脚する『食養道』では、「腹八分に医者要らず」という諺(ことわざ)からも窺えるように、減食し、多少空腹の状態の方が、健康状態は良好である、と定義します。

 この事から、千島学説を考えると、減食生活と、食べ物を穀物菜食にして食生活の改善を行うと、細胞が血球に逆分化して、血液を浄化し、これまでの体質が変わって、病気の人でも、健康体が取り戻せるという理論的裏付けが証明されています。
 例えば、肝臓病に人が、肝臓に蓄積された老廃物や有害物質を取り除く場合、食の改善を行いつつ、少食あるいは断食にして、肝細胞から血球を逆分化するということを試みますと、細胞から血球が逆分化して遊離し、次に血液中に入り、尿として排泄されます。
 こうした事を試みますと、一時的に肝臓機能は一層低下したような状態に陥りますが、こうした中で節食、あるいは断食を続けますと、時間と共に肝臓機能は恢復(かいふく)し、健康な人の肝臓と同じ様な状態を取り戻すことができます。

 その他、筋肉や各種内臓の細胞も同様であり、節食、あるいは断食を続けますと血球に逆分化して、組織の大掃除がなされ、若返りが始まります。こうした行いを、日本では古くから「禊」(みそぎ/身に罪または穢れのある時や、重大な神事などに従う前には、川や海で身を洗い清めること。大祓の詞として有名)を言ってきました。
 こうした東洋哲学の思想は、一方で「再生」を催し、千島学説の「赤血球分化説・可逆分化説」の再生理論は、ケルブランの「原子転換説」と非常によく似ています。
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