空前のグルメブームに冷めあらぬ日本人の醜態
 世界同時不況は静かに水面下で進行し、その行き先は全く見えていません。
 しかしこうした現実の中で、日本人は世界の中でも、不況とは無関係に、未だに飽食の時代の真っ只中にあって、飢える世界を余所目(よそめ)にグルメブームに踊らされ、うつつを抜かしています。

 アジア諸地域やアフリカでは飢餓難民が増加の一途にあり、そうした国際世情を尻目に、日本人の多くは、好きな食べ物を、好きなだけ、好きな時間に腹一杯食べ、非常に饒(ゆた)かな食生活を満喫しています。
 かつて日本の歴史を振り替えって見ると、日本には数え切れないほどの悲惨な飢饉が何度も起こっています。しかし、こうした歴史を振り返り、これを真剣に考える人は殆どいません。

 さて、日本人が今日のような食生活を欧米型で満喫するようになったのは、戦後以降のことであり、それも近年になってからであり、こうした経済的繁栄の享受に国民が恩恵を受けるようになったのは、つい最近のことです。
 スーパーやデパートの食料品地下街に行けば、処狭しと溢れんばかりの高級食材が並び、コンビニエンスストアーは二十四時間、欲しい食品を常に供給しています。
 何時間並んでいても食品が手に入るかどうか分からないロシアや北朝鮮に比べれば、食事情は極めて良好であり、天国と地獄の差を感ぜずにはおられません。

 何と幸せな国だろうか……と思わず口走りたいところですが、実は、この「仮初(かりそめ)の幸せ」に日本国の落し穴があります。
 好きなもの、食べたいものは、お金だけ出せば何でも手に入るという社会構造こそ、飽食に明け暮れ、美食に舌鼓を打った代償として、実は大変なものを失いかけているのです。

 医療の最先端技術は、確実に日本人の平均寿命を延ばし、世界一の長寿国となりました。しかしその一方で、成人病を患う青少年や壮年層が急増の一途にあり、また、植物人間として薬漬けにされた現実があります。
 世界一の長寿国と言っても、薬漬けにされて、寿命をだらだらと引き伸ばされているだけで、真の意味での長寿でなく、また、安らかに長寿を全う出来る状態とは程遠く、老人は病院の固いベットの上で、植物人間状態にされて、悲惨な状況の中で、辛うじて動物的な寿命を繋ぎ留めているというのが現実です。

 天命を全うする老人など、探してみれば何処にも居ず、多くの老人は、最後は病死するか、寝た切り植物状態や、惚け老人になって、哀れな人生の幕を閉じることになります。そしてこうした多くの老人は、死生観を超越することもなく、また、生死の問題も解決する事なく、生に飽くなき未練を引きずりつつ、哀れな死を迎えます。

 こうした哀れな死を迎える老人や、若くして病死する殆どの病人の死因も、その病状は難病奇病が原因であり、また、業病化しているというのが現実です。
 したがって、自然死における天寿を全う出来るというものではありません。苦しみつつ、藻掻きながら、臨終を迎えるというのが実情です。

 さて、日本における死因の第一位は、何と言っても「ガン」です。
 年々増加の一途を辿る癌死亡者は、今日では三十万人以上と推定され、凡そ三分間に1.5人の割合で死んでいることになります。
 そして死因の第二位は心臓病、第三位は脳卒中で、これは仮に死亡しなくてもボケたり、寝た切りの植物状態の後遺症が残ります。 

 更にその後に、エイズが追いかけてきています。既に、推定五千人以上と目されているこの病気は、今後も猛烈な勢いで増え始めて行くことが予想され、日本は仮に戦争や天変地異に巻き込まれなくても、確実に日本人の躰は死の淵に向かって驀進(ばくしん)しています。

 これまで最先端医療技術が発達したと思われた日本で、以上のような病気が蔓延しているのは何故でしょうか。
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