●醫しのある風景集2
人は、夢と知りながら、遠い過ぎ去った日を、心の中で夢想する。いつか見た風景であると、おぼろげながらに記憶を辿りつつも、それが何時(いつ)だったか思い出せない。しかし、日本人の「わび」と「さび」の故郷は、いつか夢想した心の佇(たたずまい)に記憶されているのではあるまいか。
四季折々が示す、風趣(ふうしゅ)に映し出す静閑(せいかん)とした風景は、現代のロック調の金属的な音に掻き乱された喧騒(けんそう)とは、一味も二味も違っているはずだ。そこには風が吹き、詩的な閑静な佇(たたずま)いが展(ひら)けているはずである。
現代のような、混沌とした時代、人々は再び、「わが人生とは何か」という問いに周期的に還らなければならない。
何かが囁(ささや)いている。うつろう季節に、しっかりと耳を傾けて……。
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