3



●カロリー神話に騙されるな

 肥満を解消するのに、様々な「痩せる方法」があります。その中でも、現代栄養学が作り上げた「カロリー神話」なるものがあり、この「カロリー神話」は、摂取したカロリーよりも、消費したカロリーが上回れば、痩せられると言う単純な論理に基づき、これを食生活の中で実践するというものでした。

 例えば、低カロリー食品を腹一体食べても、エネルギーを消費する運動量が勝っていれば、痩せられると言うものでした。そして、カロリーの低い食品であれば、「痩せられる」という錯覚を、誰もが抱いたのでした。
 こうして無理なダイエットブームが起り、肥満解消に低カロリー食品が選ばれましたが、その実は、逆効果で、肥満を解消して健康になるどころか、益々肥満となり、健康を害する結果が顕われました。

 果たして、カロリー神話に持て囃
(はや)されて、肥満を解消する為に、多くの男女がカロリー摂取痩身法に励みましたが、一体どれだけの人が痩せられたのでしようか。また、痩せられたとして、その人は今でも健康で、元気に働いていて、美食や珍味に趨(はし)るリバウンドには襲われていないのしようか。
 更には、肥満とカロリーの因果関係は、果たして存在するのでしょうか。

 肥満の原因は、高カロリー摂取にあるのではまりません。肥満の原因は、まず食べ物であり、次に運動、休息、生活習慣、体質などの複合的な要因が絡むことによって起るものです。
 したがって単に、「カロリー1つ」だけを挙げて、これが元凶になっていると断言できないのです。むしろ肥満と因果関係を持つのは、腸内に残留する動蛋白等の消化されない腐敗物であり、これが
「宿便化」されることによって起るのです。

 また、この「宿便」は、不定愁訴を起し、贅肉と深い関係をを持っているのです。宿便とは、腸壁にこびり着いた、動蛋白が残毒化した古い便の事です。この便は、ちょっとやそっとでは、容易に排泄されません。何年も、何十年も残留物として居座っているのです。

 したがって、高カロリーの物を食べるから肥るのでは無く、また低カロリーの物を食べるから痩せると云うことも無いのです。肥ったり、あるいは痩せたりするのは、腸内にこびり着いている宿便であり、また動蛋白摂取過剰が招いたもので、その元凶は、ナトロン塩過剰体質にあると言えるのです。



●宿便の駆逐

 宿便と便秘とは違います。普通、宿便と云えば、「食べ物のカスが溜まって、それが腐敗し、腐敗した物が動蛋白の粘液によって、腸壁にこびり着いているのでは」と思っているようです。
 ところが宿便は、単に食べ物のカスばかりではありません。

 宿便には、動蛋白の粘着性のある腐敗物質だけではなく、この腐敗物質の中に、「痰
(たん)」や「鼻水」のような、体内から分泌される粘着性の分泌物が混じり、これは腐敗物質と絡まって、より強力な粘着力をまして、腸壁にこびり着きます。
 「痰」は、気管から吐き出される粘液性物質です。また、「鼻水」は水っぽい、これも粘着性のある鼻腔から出る液体です。これが動蛋白や乳製品を食すると、一緒に胃の中に入り込み、消化器官へ侵入します。

 こうした腐敗物質と痰や鼻水が、消化器官に入り込み、悪い場合には一夜にして凝固し、腸壁にこびり着いて宿便化します。これは腸壁に取りつくと、肩凝りや腰痛を起し、血液を著しく汚していきます。こうした状態が汚血であり、宿便が原因で、頭痛、頭重、偏頭痛、後頭痛、逆上
(のぼせ)、腹痛、肩凝りや腰痛、背骨の痛みや引きつり、肌荒れ、吹きで物、異常な膨満感や腸内発酵、大腸ガン、直腸ガン、蜘蛛膜下(くもまっか)出血、痔、結核性痔疾などの病気を引き起こすのです。

 こうした場合は、多くが肉体的な疾患で、最初は便秘状態から始まり、腰骨の関節が弛
(ゆる)み、次に肩胛骨(けんこうこつ)の関節が弛み、更には頭蓋骨(ずがいこつ)の関節が弛むと言う悪循環から、これに纏(まつわ)る症状が派生します。

 また、精神的なものとして、「逆上
(のぼ)せる」という状態が起り、これは最初肉体的は状態から起り、怒りを顕わしたり、上気したり、血が頭へ昇ると言う状態が起りますが、これは転じて、「理性を失う」「血迷う」「逆上する」「思い上がる」という状態に移行します。これらは宿便の齎(もたら)す害と言えます。

 一方、宿便とよく間違われるものに「便秘」があります。宿便と便秘は全く異なるものです。普通、食べ物を口に入れた場合、長くても2〜3日間で、殆ど体外に排泄されるものです。どんなに長くても、これ以上、体内に停滞することはありません。ところが、こうした日数の停滞基準を超えて大腸に溜まってしまうものが「便秘」です。

 こうした便秘状態は、数日間に亘り、便意を催さない、あるいは便意を催してトイレに云っても出ないと云う状態が続きますが、それでもこうした大便は、一週間から二週間で、やがては排泄されるものです。但し、こうした停滞状態が長く続き、2日経っても3日経っても出ないと云う状態が続き、常に停滞気味にあり、排泄機能が異常状態にあることは間違いありません。

 このような排便が遅れる状態が「便秘」であり、このタイプの便が長期に繰り返されると、残留物としてやがて宿便化します。
 宿便状態と云うのは、便秘と異なり、腸内の襞
(ひだ)や繊毛に食べ物の粘着性のカスがこびり着き、長い年月を経てヘドロ状になり、これが腸壁に付着したものです。この宿便を起す元凶は、鳥獣の肉や、チーズや牛乳等の乳製品から取り込まれた酸毒化した腐敗物質です。

 宿便と言うものは、腸内停滞期間は便秘とは較べものにならないくらい長く、人間が生まれてからの総
(すべ)ての食べ物のカスを長期に亙り、少しずつ溜め込んだ腐敗物質と言えるでしょう。これを放置すると、ガン疾患へと移行していくのです。

 特に大腸ガンの増加が昨今では著しく、この原因は食生活の欧米化と、和食に似せた西洋雑食が原因しています。全般的に食生活がグルメ化し、贅沢になって、動蛋白食品等が和食の一部のメニューになり、それが一般化された為です。

和食を模した、中身は紛れもない西洋雑食。こうした和食に見せ掛けた食事の御数は、腸内に宿便の元凶を作ることになる。

 大腸ガンは欧米人にとって、非常にポピュラーな病気でした。ところが日本でも、昭和30年代の高度経済成長期を境にして、大腸ガンの発症が多く見られるようになりました。動蛋白等の脂肪分を多く摂ると、それを消化・吸収する為、それだけ多くの胆汁が胆嚢(たんのう)から腸へと分泌されます。

 これが腸内細菌によって、第二次胆汁酸という物質に変化します。本来、胆汁に含まれるコール酸・デオキシコール酸・リトコル酸などのステロイド化合物ですが、肝臓でコレステロールから生合成され、胆汁中ではグリシンまたはタウリンと結合して抱合化合物を派生させます。こうした胆汁酸が腸内において、第二次胆汁酸となり、これが大腸内の宿便と結合して、発ガンを促進する働きがあると云われています。
 大腸ガンは、直腸やS字結腸に宿便があるとなり易いとされています。



●宿便の正体

 人間の腸ならびに、その他の哺乳動物の腸は、ビニールホースの裡側のように、表面が滑らかなものではありません。小腸内に於ての第一の襞(ひだ)は、「カークリングの襞」と云われるように、大小の凹凸が重なり合ってで来ています。
 このカークリングの襞は、更にビロード状の小突起が無数に出ており、これらが第二の襞を形成しています。この襞は「繊毛」といわれ、長さが1mm前後の物質で約5000本以上もあると云われます。

 腸の表面の襞はこれだけに止まらず、繊毛の表面は吸収細胞で出来た、一層の上皮層で覆われていて、その細胞が更に小皺
(こじわ)となり、これが密生しています。この密生した部分に生えた繊毛を「微繊毛」といいます。つまり繊毛の構造は、繊毛の表皮部分に、更に細かい微繊毛があり、この微繊毛部分は電子顕微鏡でしか見る事が出来ません。

絨毛に広がる毛細血管(戦死顕微鏡写真 ×150)
微絨毛(×15000)

 この微繊毛も含めて、腸全体を拡げてみますと、その表面積は単なる円筒と考えた場合の600倍以上の広さがあり、その広さはテニスコート1面分に匹敵すると言われています。
 腸はこれだけの広さがあるからこそ、摂取した食物が、消化・吸収するわけですが、微繊毛には皺の部分に谷間があり、その谷間に長い年月をかけ、食物のカスが溜まって、腐敗物質の温床となっている分けです。

 胃の消化液でドロドロに溶かされた食物は、小腸に入ってアミラーゼ
Amylase/酵素の一つで、澱粉・アミロース・グリコーゲンなどを液化・糖化してマルトースやグルコースなどを生ずる)やトリプシンtrypsin/蛋白質分解酵素の一つで、脊椎動物では膵臓すいぞうから分泌される消化酵素である。また、蛋白質を加水分解して主にペプチドとする。膵臓からは不活性のトリプシノーゲンとして分泌、腸液中のエンテロキナーゼによってトリプシンとなり、初めて作用能力をあらわす)、リパ−ゼなどに食物分解され、腸内酵素と混ざり合い、その後、非常に細かい栄養素の粒になります。

 この微細な粒からなる栄養素を拾い上げるのが、繊毛や微繊毛であり、約5〜6mの小腸を通過する間に、栄養素の殆どが吸収されていきます。
 次に栄養素を吸収した残りは大腸に送られ、ここでは水分やミネラルを吸収します。大腸の長さは、約1.5mあり、「盲腸」「上行結腸」「横行結腸」「下行結腸」「S字結腸」「直腸」の6箇所の部位に分かれます。ここでは、摂取した食物の水分までもが吸収されてしまうのです。

 そして水分までもを抜き取られた食物の残りは、硬い固形物として、S字結腸、直腸にある程度溜まると、腸の粘膜が刺戟
(しげき)を受けて、それが大脳に達し、排便を催すのです。食物の残りカスである大便は、僅か9cmほどの直腸を一気に通過して、体外へ排泄されると言うのが消化器官のメカニズムです。

 しかし、このメカニズムにおいて、消化・吸収の過程で、繊毛や微繊毛の谷間に食物の残りカスが付着してしまうことは致し方の無い事です。特に、鳥獣の肉や乳製品のような動蛋白ほど、多く付着してしまうのです。これが血液をドロドロに汚染させる元凶となります。そして、その元凶の正体が「宿便」なのです。



●動蛋白が「どんぶり腹」を作り出し、満腹中枢を狂わせる

 宿便は人体に、どんな害を与えるのでしょうか。
 それは人によって様々であり、一般的に云って美食家ほど、正食をして居る人に比べて多いようです。
 例えば、小腸の襞や繊毛にこびり着いている宿便は、栄養の消化や吸収を妨げ、食べても食べても、食べたり無い「どんぶり腹」を作り上げます。これがひいては過食を引き起こします。

 特に大腸の重なった部分や、曲がった部分に於ては宿便が固着して、次第に腸腔を狭めていき、その結果、「便秘」や「老人性細便」を引き起こします。特に恐ろしいのは、「老人性細便」であり、排便の際の便が細くなる現象ですが、雑食で過食状態にある人は、一般的に正食をして居る人より、便が細くなり、また停滞状態となって便秘を派生します。

 かつては細便は、老人に多く見られた現象ですが、昨今では十代後半からこの細便現象が顕われ、併せて痔疾を患って居る人が少なくありません。その元凶は便秘や細便を齎す
「宿便」であり、宿便から派生する毒素は、これが腸壁から再吸収されて血液を汚染していきます。
 特に動蛋白摂取により、酸毒化された腐敗物質は、再吸収された後、血液を汚染させると言う現象が顕われます。

 更にウエルシュ菌などの腐敗菌の多い宿便があると、放屁に悪臭があり、これこそが血液を濁らせている元凶です。こうした腐敗菌は、有機物に作用して腐敗をもたらす細菌で、放屁に悪臭のある人は、この毒素が蜘蛛膜下出血に罹
(かか)る病因を作り易くします。

 蜘蛛膜下出血は恐ろしい病気です。この病気は頭蓋腔内で蜘蛛膜下に出血する疾患です。この出血は、蜘蛛膜下または隣接する脳実質内の血管の破綻によるものが大部分です。その為に、外傷・脳動脈瘤・高血圧・動脈硬化などを原因とします。つまり、血液の汚染による、ドロドロ状態が起因しているのです。

 放屁が悪臭に満ち、突然はげしい頭痛・項部硬直・嘔吐を来す人は、一応、蜘蛛膜下出血が起っていることを疑ってみなければなりません。また、意識を失ったりする人は要注意であり、脳脊髄液は高度に血性を呈する場合があります。こうした元凶になっているのが宿便です。

 宿便はその他に、便秘、大腸ガン、結腸ガン、痔疾、結核性痔疾、痔瘻
(じろう)、肛門周辺炎、裂肛、腸潰瘍などの原因を作ります。こうした前兆が、ニキビ、肌荒れ、眩暈、頭痛、頭重、倦怠感、無気力、登校拒否、出社拒否、憂鬱などであり、以上に述べた病因の予備軍の因子を持っている事になります。

 障壁内に宿便が残留されて来ると、どんなに栄養がある物を食べても、それは栄養になりません。また、その意識は、食べても食べても食べたり無い「どんぶり腹」になります。その為に「肥満」します。こうした肥満を東洋医学では「偽腹」と云います。

 肥満症の人は、その食物自体が美味しいから食べるのではなく、満腹中枢が狂っていて、食べても食べても食べたりないのです。こうした満腹中枢の意識まで、宿便は狂わし、また宿便の要因になっているものが、鳥獣等の食肉を始めとする動物性蛋白食品です。

 また乳幼児期から、母親が子供にナトロン塩の多い、動蛋白食品ばかりを与えていると、難病と云われる癲癇
(てんかん)の病因を招きます。この事について、西式医学研究所の渡辺医院院長は、宿便と癲癇の関係について、次のように述べています。
 「難病の癲癇は、大腸の横行結腸の宿便停滞に原因がある。この停滞した場合に発作が起り、また発作が起るのは宿便を通そうとする時に起る。必要があって起っているので、これを抗痙攣剤
(こうけいれんざい)で抑えてはならない。こうした剤薬ばかりを常用していると、知能の発達が抑えられ、脳の働きだ次第に鈍くなり、精薄になってしまう」と警告しています。

 宿便は人類に、精神的肉体的に、様々な害を与えていることが分かります。
 また、断食を通じて宿便が排泄される時には、物凄い悪臭が発生します。この宿便は人によって様々であり、十人十色です。
 2〜3週間ほど断食を続けると、長年滞留していた宿便が吐き出されますが、その種類は、黒便、砂便、結石、脂肪塊、寄生虫、仮性糞石、粘液毒素などであり、人間がかくもこのような「病気の原因」を背負って生きているのかと気付かされます。

 そして、これ等の元凶が吐き出された時、気分は爽快になり、またこれにより、腐敗物質が排泄されるわけですから、放屁も少なくなって悪臭も減り、心身ともに澄明感が蘇
(よみがえ)って来るのです。
 また、こうした物が排泄された時、生まれて初めて「禍
(わざわい)の重荷」を下ろしたように躰が軽くなり、頭の中までがスカッとして、爽快に満ちた元気が蘇って来るのです。

 人間の躰は、断食と云う禊
(みそぎ)を行った時、洗心浄体、清浄無垢の躰が蘇り、病気の元凶であった禍も消滅していくのです。