●大掃除としての「出す健康法」
現代人の多くは、躰中に出さなければならない多くのゴミを溜め込んでいます。そして今日の現代医学は、『入れる医学』を基本としています。しかし、『入れる医学』では病気は治りません。そこで、『出す医学』が病気克服のキーワードとなります。つまり、これが「出す健康法」であり、断食をする意味が、ここにあるのです。
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▲日本には、「京の着倒れ、大阪の食い倒れ」という言葉がある。飲み食いに贅沢(ぜいたく)をしていると貧乏になることを云うようであるが、本来の意味は、「病気で倒れる」ことを云う。 |
日本人は、戦後の現代栄養学で、詰め込むことばかりを学んで来ました。
現代は飽食に時代でありながら、未だに美食詰め込みの悪癖が直らず、飽食の真っ只中にあって、国民の大半は詰め込むばかりの不摂生な日常生活をおくっています。その結果、現代人を襲ったのは、食傷から起こる、食の誤りであり、その元凶が成人病と云う、生活習慣の誤りから来る「慢性成人病」だったわけです。
誤って取り込んでしまったものは、これを出さなければなりません。しかし、単に「排便」という方法だけでは、完全に食べ物から発生した体内に残る老廃物や酸毒物質は排除することが出来ません。この酸毒物質が種々の病気を招いているのです。現代人が種々の成人病から解放される為には、まず体内に蓄積する多くの老廃物や酸毒物質を排泄することから始めなければなりません。
そして私達が忘れてはならないことは、体内に蓄積された老廃物や酸毒物質を排除した後には、「食べ物が人体をつくる」と同時に「食べ物が運命までもをつくる」ということを、しっかり認識しなければならないことです。
人は食べる物によって、身体だけでなく、人相も手相も考え方 さえも決まってしまうことを忘れてはいけません。まさしく人間は「食の化身」なのです。
したがって、食の間違いはそのまま「運命の間違い」に反映されてしまいます。ですから、「食」を正せば、その後の運命も 変ってしまうのです。
また、薬に頼り過ぎる生活を行ってはなりません。更に、自分の体質や症状に あった食事をしているでしょうか。現代栄養学が云うように「何でも一日30品目以上の食事を摂る」という食事の仕方をしていると、間違いなく成人病を煩ってしまうことになります。間違いだらけの栄養学を信仰してはなりません。
特に大事なことは、食を摂取するばかり考えて、出すことを 忘れてはいないでしょうか。これを忘れると、結果は悲劇的です。
最近、注目されているミネラルや酵素に ついても、健康と大いに関係が深いものです。
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病気が治る原則は、酸アルカリの法則、陰陽のエネルギーの法則、 環境などその背景に働いています。 |
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人体にはミネラルと酵素が必要です。 |
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食べたものを完全に排泄すると言う「出す医学の智慧」が必要です。 |
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病気別の食養道の智慧。何でも一日30品目以上を食べようでは、食傷を起こします。 |
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食と運命の関係は密接です。それは人間が「食の化身」であるからです。 |
●断食の効果は、禊を通じ一種の悟り
心と身体の大掃除をするには、「断食」が一番大きな効果があります。
私たちは、世の中と云う世俗の分別心に囚われて生きています。世俗の習慣をいつのまにが常識と思い込むようになり、この世俗風の常識が、暗い固定観念と先入観で汚染された「分別心」を植え付けました。その結果、真理を色眼鏡で観察し、偽物を正しいと思い込む固定観念が生まれました。
こうした意識を、正常に戻す為にも、断食は一種の禊(みそぎ)としての効果があり、間違いだらけの固定観念をリセットしてくれます。つまり、断食を機転として「発想の転換」が行われるのです。
この転換の中には、身体の細胞の段階までもをリフレッシュする大きな効果があります。
断食は人間最大の欲望である「食欲」という本能を断ち、体力を低下させて精神力を高め、生きるか死ぬかのギリギリの所まで追い詰めます。そしてこれを超越した時に、一種の悟りが開けるのです。
断食を行うと、断食三日目くらいから、神経が冴(さ)え渡り、視覚、聴覚、嗅覚が鋭くなって、自分の体臭や吐く息の息遣い、更には心臓の鼓動までもが聞こえて来るようになります。また視覚に於ては、弱った視力が回復され、視(み)る景色すべてに不思議な透明感が起り、身体の細胞の隅々まで蘇(よみがえ)って来るのです。弾むような生命力が湧き起こり、躍動感に溢れます。
しかし一方、断食には生命に関与するような、危険と隣り合せの行法であると云わなければなりません。断食を実行するには、ただ空腹に耐えて、一定期間を絶食で過ごすと云うことだけではありません。
本断食を実行する為には、本断食期間の三倍の準備期間である「減食期間」が必要であり、また、本断食が終了すれば、本断食の三倍分の補食回復期間が要(い)るのです。
減食期間や補食回復期間を設けずに、断食をいきなり始めると、仮に、本断食は満願しても、その後の補食回復期間に無理があり、また減食期間を設けずに行うと、激しい食への妄想に襲われ、散々な目にあって、かえって健康を害してしまいます。この愚を冒さない為にも、断食を行うには、正しい準備をしなければならないのです。
●断食の為の準備期間
断食を行うに当たり注意しなければならないことは、食事の量を徐々に減らしていく減食期間を設けなければならないと云うことです。
断食を実行しようと思ったら、まず、これまでの食生活を改めなければなりません。多くの人は、雑食をしている為に、雑食を「正食」に変える必要があります。
正食とは、玄米穀物菜食の事であり、玄米を中心にした穀物類を主食とし、それに煮野菜や小魚等の少量の魚介類を副食にする食餌法(しょくじほう)です。
一方、雑食と云うのは、主食が白米か食パンで、副食として魚肉、獣肉、鶏肉、卵、乳製品、肉加工食品などに少量の野菜類を摂り、また果物等の甘橘類、菓子類、清涼飲料水などを飲食する食事を「雑食」といいます。
こうした食事をして居る人は、「夫婦アルカリ論」から云うと、ナトロン塩が摂取過多になっているので、カリ塩の多い豆類、野菜類などを摂取して、カリ塩とナトロン塩のバランスを採らなければならないのです。
これは和食か洋食かと云う違いではなく、和食をしていても精進ではない限り、和食化した洋風料理を食する、「雑食」ということになります。
つまり、断食するのは、断食をスムーズに遂行させる為に、雑食を排して、正食を実行し、それが定着したところで、断食をすることが必要なのです。
雑食をしている生活習慣を改めずに、断食しても、その後のリバウンドに悩まされて、逆戻りしてしまいます。持病を持っている人は、病気を更に悪化させたり、あるいは食べ物への執着で、食の妄想に取り憑(つ)かれて、精神的にも廃退していきます。
こうした心身ともに、事故に陥らない為に、雑食の人は、まず正食に戻す必要があるのです。正食の基本は、玄米穀物を主食にした粗食・少食です。殆ど動物性蛋白質を摂るような食生活は行いません。
正食に戻し、カリ塩とナトロン塩の拮抗(きっこう)を図らねばならないのです。
食物は栄養学が云うように、食物が消化・吸収する為には、有機性の蛋白質や脂肪、澱粉(でんぷん)だけではなく、無機性の塩類が必要です。しかし現代栄養学は、無機成分が有機成分に対して働く作用に関しては殆ど無視しています。無機成分である塩類の性質と効力を化学的に充分に研究検討せず、無機成分を意外にも見落としているのです。
ただ、蛋白質・脂肪・澱粉の三者の兼ね合いばかりを論じ、無機成分の存在を軽視しています。したがって、カリ塩とナトロン塩の研究を、怠ったまま食材の有効成分の有無ばかりを取り挙げているのです。
こうした食指導下では、どうしても雑食傾向に趨(はし)り、雑食が一番正しい食餌法と思い込んでしまいます。
したがって、断食をするには、食のベースである無機成分の存在を見逃すことができないのです。断食中にこの影響が朏るからです。
ここにカリ塩とナトロン塩が正しく拮抗する「夫婦アルカリ」の論理が必要になって来るのです。夫婦アルカリとは、カリ塩とナトロン塩で、これを夫婦と見立て、夫婦がお互いに協力する様を、こう呼称しているのです。
さて、正食が実践できたとして、次に断食の準備にかかります。主食の玄米穀物御飯も、「御飯」から「お粥」に変える必要があります。また「お粥」も徐々に、「七分粥」「五分粥」「三分粥」「重湯」の順に減少させていかなければなりません。また、補食回復期間はこの逆の過程を踏んでいきます。
減食期間(21日間)
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本断食(7日間)
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補食回復期間(21日間)
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七分粥
5日間
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五分粥
5日間
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三分粥
5日間
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重湯
6日間
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完全絶食
7日間
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重湯
6日間
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三分粥
5日間
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五分粥
5日間
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七分粥
5日間
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例えば、一週間の断食を計画した場合、一週間の三倍の合計21日間を減食期間に充(あ)てなければなりません。この21日間に減食計画を立て、徐々に減らして減食し、本断食に入って行くのです。
これを行わずに、いきなり断食すると、喰(く)い溜めをして断食に臨むようなもので、結果はよくなく、健康を大きく害してしまいます。
健康法的な断食を行って、ここから効果を得ようとすれば、少なくても最低一週間の断食が必要です。
更に、確実に大きな効果を狙うのであれば、28日間の断食が最も効果が大きいのですが、自宅に居ながら、更に仕事や学業を続けながらの断食は、せいぜい一週間が限度でしょう。したがって、一週間の断食をする為には、その本断食の前後に、各々21日間の最初の減食期間と、本断食終了後の補食回復期間が必要になります。
本来の断食は、一切の社会活動を止め、その中で行うのが最もよい方法なのです。こうした環境が作れるのなら、28日間断食は最もよい法法であり、人間の躰は28日間、何も食べずに水だけで生きられるように作られています。体内の無駄な贅肉に溜まる蛋白質をエネルギー源にして生命の維持をしますので、水分の補給をしならが、規則正しいリズムで断食を行うと最も理想的な効果が得られます。
現代人は、リフレッシュする為に日頃の雑事から遠ざかり、本来の自分を見つめ直す機会が必要なのです。また、情報過多にある今日、こうした過剰な情報から解放されて、「自分とは何か」ということを見詰め直す必要があるのですが、中々こうした機会にも恵まれません。こうした機会を失っていることが、そもそも現代人に現代病を齎している現実があります。
しかし、長期に亙る休暇が中々取れそうにない現代人は、少なくとも一週間程度の断食を行い、心理的なバランスを調整する必要はあるのではないでしょうか。僅か、一週間だけでも食欲から解放され、「身分とは何か」ということを見詰め直すのも、心身の健康としては有益なのではないでしょうか。
●断食するとどうなるのか
断食は、これまで数年あるいが数十年単位で体内に停滞していた「宿便」という老廃物を排泄し、これにより内臓を蘇(よみがえ)らせ、肉体を十年ほど若返らせます。断食は、総(すべ)ての内臓の機能を休息させ、消化・吸収と云う働きがゼロになります。
こうした内臓環境は、これまでの外界からの刺戟がゼロに近くなり、断食中は各内臓に一時の急速を与えます。
外界からの刺戟が非常に小さくなるので、普段の時には緊張を与えていた交感神経は休息する事が出来、平常心を作る副交感神経は、この時とばかりに優位な立場に立ちます。これにより、慢性病の蘇生・恢復にもなるし、肥満体であった人も、急速に改善されていきます。
普段から怒りっぽい気性であった人は、和やかに大らかになり、何事かに苛立っていた人は、神経質な面を柔らげて、柔軟な協調性が生まれてきます。
逆に、これまで怠慢で、のろまで、緩慢な気性の人は、断食を通して機敏になり、頭の回転も瞬速になり、鋭い、切れる発想の転換ができるようになります。
人間は生まれながらに引き摺った、過去世からの「性格」というものを持っています。本来、こうした性格は変わることはありません。それは人間としての生まれながらの「因縁」を引き摺っている為です。しかし、断食によって、この変わらない性格に、廉が取れますから、気性的に「円満」な気性が加味されます。断食を満願成就し、これを見事に達成した人は、僅か一回の断食を通じても、心身ともに大きな利点を齎(もたら)します。
しかし、断食はこうした利点ばかりではないので、これを行うには正しい指導者のアドバイスに従いながら、実行する必要があります。そして自分勝手な自己流は、百害あって一利なしと云うことを肝に銘じなければなりません。
断食中こそ、その人のこれまでの性格が露骨に顕われますので、空腹感に囚われて、躰を動かす事をせず、横になってゴロゴロしてばかりでは、食べ物の事が頭から離れません。
また、こうした悪想念は潜在意識に中に送り込まれますので、これは反動的な強い想念となって、断食明けの暴飲暴食ばかりを思い描く事になります。
よく断食道場等では、若い女性等が美容と健康の為にと、断食をする人を見かけますが、こうした女性の集団には、入寮する前に、料理や食べ物の本を持ち込み、断食明けには、これが食べたい、あれが食べたい等と、断食後の暴飲暴食の計画を練っている人が居ますが、これなどは、まさにマイナスの暗示を潜在意識の中に送り込んでいることになります。
こうした妄想から離れる為には、まず、はっきりとした断食の目的意識を持つ事が大事です。また、減食期間を正しく守り、断食を満願しても、直ぐに食事に飛びつくのではなく、徐々に戻していくと言う、補食回復期間を守ることが大事です。多くの人が断食に失敗するのは、本断食の完全絶食期間よりも、断食明けの補食回復期間に時間を掛けず、三日程で終らせて普通食にしてしまうことに、そもそもの断食の失敗があります。
断食は、本断食の完全絶食期間よりも、断食が終ってからの補食回復期間の、「本断食の三倍の期間をかけて徐々に戻していく」という原則が中々守れないのです。これはその人の食に対する妄想を断ち切る威力があるか、否かに関わります。断食に崩れてしまう人は、こうした意志力が最初から欠けています。
これまでの結果から視(み)ますと、断食を失敗する人は、主に「雑食者」で、白米や食パンを主食にし、それに副食として獣肉や魚介類の量が多く、飲酒や喫煙の経験があり、暴飲暴食に趨った人は、断食をしてもあまりいい結果が生まれません。したがって、徹底して「正食」の経験を積み、長い期間正食をはじめて、約半月以上経っても、その状態で不都合がないと言う人が、やはり強靱な意志力を持っている為に、スンナリと減食期間もこなし、本断食期間中も食の妄想に襲われる事なく、意外に絶食期間にも元気で、よく躰を動かし、更に断食明けでも、決められた通りの補食回復期間を守り、中には雄々とこの期間を、二週間も三週間も延長する人がいます。
こうした人は、かなりの意志力を持っていますので、その後の人生は、恐らく輝かしいものでしょう。
さて、断食をするとどうなるかを述べてみましょう。
減食期間を終え、本断食に入って三日程経つと、体液は酸性に傾きます。これは躰自体が中和しようとして、胃酸などを吐き出す状態を作ります。しかし、四日目頃から、胃酸の負うとも少なくなり、安定期に入ります。但し、喫煙の習慣があった人は、四日過ぎても胃酸の中にタバコのヤニなどが混じり、黄褐色の液体を吐き出す人も居ます。
また、腸が捻れていたり、軽い傷があったりすると、断食期間中に痛みを感じ、腹痛に悩まされる人も居ます。これは消化され磨かった腐敗物質が腸壁内の溜まり、こびりついている場合に腹痛が起ります。これこそが宿便の正体であり、ちょうどパイプにこびり着いたヘドロのようなものです。こうした宿便のこびりついた物が、腸壁からはがれる時に腹痛に苦しめられます。
この宿便と云われるヘドロは、生まれてからの腐敗物質がこびり着いたものであり、酷い人は4kgも、5kgも抱えている人がいます。これが断食期間中、まるで雑巾を絞るように、幾らでも出て来るのです。不摂生を重ねて、暴飲暴食に走った経験のある人は、この量もかなりの物で、体重が80kg以上もある人は、こうした宿便が20kg以上も排泄されることがあります。
断食すると、こうした宿便が排泄されるのです。宿便が取れれば、腸壁の状態も健全になり、修復されて新たに蘇りますから、断食後は非常に栄養の吸収状態も良くなり、肥り過ぎの人は痩せ、痩せ過ぎの人は逆に肥って、「中庸(ちゅうよう)」という体躯になります。また、この「中庸」状態を長く維持できれば、当然、記憶力も増し、頭の回転も早くなりますから、頭脳明晰となって頭は益々冴えて来るわけです。
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