さて、西郷派大東流合気武術では「頑強な躰」を指す場合、単に肉体だけを指すのではなく、自分の持つ霊体及び肉体を指し、この両者を強く結び付けているのが、各々の心情(気)であると定義しています。
人間の所有する人体は、単に肉体だけの、肉の塊の意味ではなく、これを総じて「生命体」と言います。
生命体とは、生体と命体が重なり合ったもので、生体は肉体を指し、命体は霊体を指します。両者は普段、重なり合っていますので、これを肉眼で確認する事は出来ず、その意思の殆どは肉体の意思(心)によって動かされています。
この場合、問題になるのは“体力”ではなく、「体質」です。
「体質」こそ、生命力と大きな関係を持っているのです。
そして「肉体」対「霊体」の分離比は、肉体の意思が全体の九割を占め、霊体は僅かに一割に過ぎません。
つまり全体を100%として、90%以上が肉体、10%以下が霊体ということになります。
多くの常人はこうした分離比によって、物事を考え、思索し、それを行動に移しています。したがってその原動力の中心は「肉体」から発する意思であり、多くの武道をやる人や、スポーツマンは、肉体を酷使さえすれば強くなると信じて疑いません。
しかし肉体が頑強で、年齢的にものを言うのは、精々どんなに長い人でも、四十歳前後までであり、既に三十(みそじ)の壮年期の入口を超えた頃から、体力は衰え始め、記憶力や思考能力が低下し、鈍ってきます。これは肉体という九割の心に頼っている為です。
さて、肉体には肉体の心があり、これは霊的に見て「性悪説」から単を発した心です。そして霊体には霊体の心があり、これは「性善説」から発した心です。
性悪説の心は、「悪魔に誘惑」される心ですから、肉体がきつくなると、休みたい、楽をしたい、怠けたい、遊びたい、もっと享楽に興じたい等の、良からぬ心に支配されて、快楽遊戯にうつつを抜かし、低空飛行をして、意志の弱い人は墜落に向かって人生を棒に振ります。
また性善説の心は、良心の心ですから、自分を励ましたり、挫けそうになる自分に援助の手を差し伸べます。
西郷派大東流合気武術では道場稽古の他に、「山稽古」という特殊な稽古があります。
これは実戦を意識した野戦での兵法を会得する為に行われますが、単に敵と遭遇して白兵戦の死闘を繰り広げるだけではなく、長距離を強行軍したり、高山に登り、大自然と融合して、霊体を鍛えるためにこうした稽古が行われます。修験道の修行と非常によく似ています。
皆さんは「ランニング・ハイ」という現象をご存じでしょうか。
ランニング・ハイは、極度に疲れきり、もう倒れそうだ、呼吸が続かないと言う時に、不思議に現われてきます。このメカニズムを説明すると、簡単に申し述べておきますが、エンドルフィンの効用によって、脳から一種の麻薬物質が分泌され、これが肉体を陶酔状態に至らしめて、恍惚状態の、肉体力とは異なる別の回路が開かれます。
これによって、以降、疲れ知らずの躰になり、今迄とは違って動きがスムーズにこなせるようになります。
また、気分が高揚した状態になって、今迄見ていた景色が一変し、新しい世界が開けてきます。これは一種の「悟り」であり、これに至って「合気統覚法」を実践していける体躯を得ることができます。
この事についての詳細は、西郷派大東流宗家・曽川宗家著の『合気口伝書』各巻(綱武出版)並びに『大東流秘伝大鑑』(八幡書店)を参照下さい。
さて、頑強で丈夫な体躯とは、人間の生命体を司る生体と命体の分離比を、「五対五」の関係に持っていくことを指します。
この体躯は、少量の食べ物だけで非常に元気であり、長時間働けるという省エネ体質を作ることを目的にします。つまり生活スタイルを粗衣を身にまとうことに定め、粗食・少食を旨とする食餌法を実践することを指します。
現代は、不況下であっても、日本国民は比較的裕福であり、未だに飽食の時代です。
テレビのコマーシャルは、その60%が食品関係企業のCMで占められています。また番組も、クイズ番組と同様の視聴率で、どこのチャンネルをプッシュしても、グルメ番組や料理番組が放映されています。
そして多くは「現代栄養学」に基づいたレシピが紹介され、肉と野菜を半々に摂取する厚生労働省の指示に添う、カロリー計算上の料理がもてはやされています。
しかしこうした料理ばかりを食べていると、やがて三大成人病(動脈硬化・心臓肥大・高血圧・高脂血症・悪性腫瘍・糖尿病・肺気腫や骨の退行性変化など、壮年期以後好発する病気の総称で、生活習慣病を指す。昨今は動脈硬化、高血圧、糖尿病を三大成人病という)といわれる病気の病因になります。
糖尿病は食べ過ぎから起こるもので、高血圧はイオン交換樹脂法で作られた塩化ナトリウムの摂り過ぎから起ります。これが厳密な意味で、自然塩の摂り過ぎではなく、塩化ナトリウムの摂り過ぎなのです。
特に注意したいのは、一般に市販されている食卓塩というものは、その大方の99.99%が塩化ナトリウム(化学式Nacl/水によく溶ける無色の立方晶系結晶。岩塩として天然に産し、また、海水中に約2.8%含まれる)が食塩の主成分であり、完全な人工精製塩で、ミネラルは1%も含まれていません。
高血圧の人は、塩化ナトリウムが多く含まれた味噌や醤油や食卓塩の摂り過ぎで、一般には「塩分の摂り過ぎ」と判定を受けています。しかしこの塩分の摂り過ぎは、精製塩の摂り過ぎなのです。
もっと正しい「塩の知識」、つまり「自然塩」の大切さを知り、自然塩のみを摂取したいものです。そして海水には、高血圧や胃癌の元凶とされる塩化ナトリウムは、僅かに約2.8%しか含まれていないのです。つまり海水から作った自然塩は、ミネラルの宝庫といえましょう。
ちなみに「疲れやすい」と現代人は口にします。
しかし、この「疲れやすい」は、実は塩分不足から起こります。
一般に疲れやすさに対処する方法として「スタミナ料理」と称する、食肉を大量に摂取して、これを補おうとしますが、これは大きな誤りです。
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▲肉はスタミナの“モト”ではない。
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昨今は「塩分を摂り過ぎないように」などということが盛んに言われています。この場合の塩分とは、塩化ナトリウム量が99.99%の物を指すのであって、実際には「自然塩」のことを言っているのではありません。
自然塩とは、トリウム量が約全体の八割で、他の二割はミネラル成分と言うのが自然塩であり、この「ミネラルの含まれる塩」が不足しているのです。
この「ミネラル入りの塩」が不足すると、実はスタミナ切れになり、活動の為のエネルギーも、また集中力も欠乏します。そして、ついには“頑張りの利かない躰”になってしまいます。
人体に「スタミナを補う条件」としては、まず、血液がサラサラ(血液が生理的に中性状態)でなければなりません。動脈硬化などで血管にコレステロールが溜まる食肉の摂取では、この条件を満たしません。いつの間にか、私達は現代栄養学のウソを信じ込まされ、肉はスタミナの元と安易に信じてしまったのでした。
次に日本で一番致死率の高い病気は、相変わらず「ガン」です。このガンも食生活の誤りから来るものです。
日本人は先の大戦の敗戦とともに、その生活様式や文化までを、欧米に求めました。その求めた最たるものに欧米式の食生活がありました。
これまで塩化ナトリウムの摂り過ぎで、だんとつであった「胃癌」は、ここにきて「大腸癌」に抜き去られようとしています。
これは玄米を初めとした「米の食文化」が、“四ツ足”を屠殺することで生じた「屠殺食文化」に、逆転されたことによります。
ご存じのように大腸癌は、日本人が肉食(牛肉、馬肉、豚肉、羊肉、鶏肉、鮪のトロ、及びその他の大型高級魚、卵、蛇肉、蛙肉、蝸牛)を開始し、それに併せて、乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど。日本製は高熱処理をしているために乳酸菌は死滅)や、その他の食肉・魚肉加工食品(ハム、ソーセージ、薫製にした食肉や魚肉、蒲鉾、竹輪、魚の天麩羅など)を摂取し、それが豊富に食べられることにより、増え始めました。
大腸癌は大腸に発生する癌であり、多く円柱上皮性腺癌で中高年に好発します。
脂肪に富む洋式食事が普及して、以後増加し始めた病気です。この癌の特徴は、進行が早く、しばしば肝転移を起します。
またその他の腸に発生する癌腫としては、主に結腸や直腸に発生します。大部分は腺癌で、直腸癌と大腸癌に区別されます。
では何故こうした癌に侵されるのでしょうか。
理由は食肉と、それに付随した動物性脂肪の塊の乳製品の大量摂取です。
こうした食品は、腸内で停滞し、腐敗菌を発生させます。この腐敗菌が排泄されずに長期間滞った場合、正常細胞はガン細胞へと移行します。つまり血液汚染による病気なのです。
私たちはこうした“愚”を是非避けたいものです。
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