●春が旬のイタドリについて
春は、一斉に命の息吹(いぶき)は噴き出します。植物とて例外ではありません。春の野山は、こうした植物で一杯です。
特にこの時期に息吹を吹き返すのは、冬の間に養分を蓄えた植物達です。その中でも、とっておきなのはイタドリなどのタデ科の多年草です。この時期には、柔らかい新芽を噴き出します。イタドリは至る所に生え、根茎は長く這います。若芽はウドに似て、紅色・微紅の斑点があります。茎は中空で節があり、高さ1メートルほどにも達します。
春のこの時期に採取すれば、柔らかい若芽を食養にする事が出来ます。若芽は食用とし、また、根は「虎杖根」として利尿、通経、健胃剤にすることができます。古名は「たぢひ」とか「さいたづま」とか言われるものです。
この植物は日当たりのいい、土手などに自生し、茎には中空で斑点があります。葉は卵形の楕円(だえん)をしており、葉脈ははっきりとしています。茎や葉は、若いうちは赤褐色で柔らかく、この時期が食べごろと言えます。
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▲日の当る土手などに自生するイタドリ。
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▲若芽は柔らかい。
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▲柔らかい為に食養としても最適。
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イタドリの由来は、「疼取(いた‐ど)り」に由来します。つまり「うずき」や「いたみ」を和らげると言う意味をもっているのです。
『八雲御抄(やくもみょうしょう)』には、和名でイタドリの由来を説明しています。この和名のイタドリとは、「このもの皮に糸を生ず。くらふに糸を取る。いとどりを転じてイタドリという」とあります。
また中国の医学雑誌などには、イタドリの説明がなされ、この植物は緑膿桿菌(りょくのう‐かんきん)に対して抗菌力があることを説明し、特に火傷に用いて化膿を防ぎ、治療効果を挙げて居る臨床例を報告しています。また、枯草菌・根粒菌・腸内細菌・結核菌の類にも効果があるとしています。
さて、私たち現代人は、野菜はスーパーや八百屋で買うものと頭から決めつけています。しかし今日、売られているこうした野菜は、充分に太陽のエネルギーを吸収していない為に、植物性分のパワーが失われています。
日本は自然に恵まれ、四季折々に様々な山野草が生息しているのにも関わらず、自然の滋養をたっぷり含んだ、食用性植物の需要が激変しています。そして視線に自生している野草に関しては、誰も食べないし、食べる事を識りません。また、その智慧(ちえ)もありません。
日本の風土で育まれた、野性植物の威力を識(し)らない現代人が、その一方で、こうした自然の恵みを無視して、健康の源泉を西欧の科学に求めようとしている実情があります。これは非常に危険なことではないでしょうか。
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▲野山には、この時期イタドリが豊富。
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▲採取したイタドリ。
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人間は、本来ならば、生まれながらにして、精神的、肉体的、社会的に健康な人は環境の変化に適応する能力を持っています。しかし、近年に至り、現代人の適応力バランスは崩壊しつつあるようです。身体的な病気とはいえない状態を保ちながらも、精神的には異常を来す者が殖(ふ)えはじめています。精神に異常を来した人間が余りにも多いようです。時代の流れが速くなり、それに順応出来ない人が出てくるのは当然の事でしょう。そして“心”と“躰”を蝕んでいます。その結果、多くの人が、病んでいるのです。
病気とは言えないまでも、躰(からだ)が疲れ易く、何か重い、食事は美味しくないと言う人が増えはじめています。また、便通がよくなく便秘気味だとか、夜眠れないなどの心身に異常を来す人が増えはじめています。過労死も殖えはじめていますし、また、過労から自殺に至る壮年層も少なくありません。それに平行するかのように、テクノ・ストレスから精神分裂病を発病する若者も少なくないようです。心が崩壊し掛っているのです。
現代社会でのストレス、仕事上でのプレッシャー、運動不足、働き過ぎ、不摂生な暴飲暴食の生活、これらの様々な要因が、人間をして、敗北の道へと引きずり込んでいます。
では、こうした元凶が、いったい何処から発生しているのでしょうか。
それはとりもなおさず、食事の乱れであるといえましょう。食の陰陽のバランスの大きな狂いが、こうした元凶招き寄せ、事故者を多発させているのです。そしてこうした元凶は、凶悪な犯罪まで引き起こす要因を作り出しています。現代人は、一体どうしてしまったのでしょうか。
現代こそ、食の乱れによって、様々な問題が浮き彫りになり、全国各地で、今までには考えられないような事件が、毎日のように多発しているのです。
飽食の時代、現代人は、食の有り難さや、その感謝を完全に忘れてしまっています。食べ物が有り余り、食べずに捨てる食料の量は凄まじい限りです。今こそ、食に対する基本的な考え方を改めるべきではないでしょうか。
自然の滋養を沢山含んだ野草に目を向けるべきでしょう。なぜ、太陽の恵みを充分に受けた素晴らしいパワーの野草に目を向けないのでしょうか。野菜は、スーパーや八百屋で売られている温室育ちの水溝栽培の野菜のみが、植物性の野菜ではありません。
野菜の王様こそ、太陽のエネルギーをいっぱいに受けた野草なのです。野草は自然の滋養やビタミンやミネラルが豊富であるばかりでなく、生薬としても、漢方薬としても、人間を正常に戻す、大きなパワーを持っているのです。
そして今こそ、ビタミンやミネラルを豊富に含む、大自然の野草に目を向けるべきではないでしょうか。
野草を「健康草」と考え、これにもっと興味を持ち、日常の精神的肉体的病気を駆逐して、野草を識る事で、健康増進に役立ててもらいたいものです。
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▲イタドリのお浸し
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さてイタドリの美味しい食べ方としては、採取時期が4月から5月頃で、葉の広がる前の若芽や茎の部分を、手で折れる所から折り採ります。それをお湯で茹でます。茹でる時は、塩を一摘みお湯の中に入れ、2、3分程度ゆでます。酸味があるので、生食が適当ですが、てんぷら、ポン酢を入れて“お浸し”や“酢の物”にも美味しく、またジャムにしても美味しく食べられます。
●タンポポの効用
タンポポはキク科のタンポポ属の多年草です。全世界に広く分布し、日本にはカンサイタンポポ、エゾタンポポ、シロバナタンポポ、また帰化植物のセイヨウタンポポなど約10種以上あります。普通、タンポポはカントウタンポポをいいます。
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▲タンポポの花
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▲タンポポの茎
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根はゴボウ状で、葉は土際にロゼットを作り、倒披針形で縁は羽裂し叢生しています。この植物は、春、花茎を出し、舌状花だけから成る黄色の頭花をつけます。痩果(そうか/果の一種。果実は小さく、果皮が堅く、成熟しても裂開することなく、内部に、果肉に密着せず1個の種子を入れるものの類)は褐色で、冠毛は白色、風によって四散します。若葉は食用となり、蕗(ふき)の薹(とう)と同じく、微かな苦味があり、若葉を摘んでミモザ風なサラダとなります。また葉を茹でてお浸しにすることも出来ます。各種あえも物もいいようです。
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▲タンポポの痩果と黄色の頭花。
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根は牛蒡(ごぼう)のようにきんぴら風にして油で炒れば、オツな味です。タンポポを食卓に飾ることで、春の野の雰囲気が漂い、眼を和ましてくれます。
その他、根は生薬の蒲公英(ほこうえい)で、健胃や泌乳剤(母乳のでをよくする)としての効用があります。その他、解熱、発汗、強壮、変質薬などにもなります。乳液は疔瘡(ちょうそう/根の深い腫物のことで、急性化膿感染をいう)あるいは蛇咬(じゃこう)につけます。
またタンポポの根は、かつてドイツでは、焦がしてコーヒーの代用になったこともあります。その為に、根を炒って焦がしてコーヒーに混ぜてもいいようです。
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