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技法の根源となる「ただ一つのこと」

合気揚げ理論 ■
(あいきあげりろん)

●スポーツライター/宮川修明氏 談話
  『志友会報』秘伝!合気揚げ、第133号より

 曽川宗家は、「大東流は合気揚げに始まり、合気揚げに終わる」と、口癖のように言う。恐らくこの合気揚げの中に大東流の秘密が隠されているからであろう。

 私は個人教伝で、合気揚げの「力貫」「肩球」という口伝による秘術を教わった。これは曽川宗家から公開のお許しがでないので、今回は紹介することができないが、合気揚げは両手持ちから始まる特異な攻撃方法をとっている。
 つまり両手持ちは、両手封じであり、一説によると、居合の「居掛」を恐れる相手が刀を抜かせないためにこれを、懸命に抑えるという。少しでも手を緩めれば、刀を抜かれて切られてしまうからだ。したがってこの抑えは、命賭けの抑えであり、ために必死の抑えだ。これを揚げるのが合気揚げである。
 この不思議な秘術はこの中に総べて入っており、これが大東流の「合気」を代表しているとも言う。

 しかしながら、十年やっていても、二十年以上やっていても、これを会得している人は殆ど居ないというのが実情のようである。

合気揚げの図

▲合気揚げの図(クリックで拡大)

●合気揚げ解説

 合気揚げは両手を強く封じられ、それを揚げる業(わざ)である。この業は「合気」に通じる総ての極意が含蓄されていて、これが会得できなければ、大東流の合気は完成を見ない。

 この業は単に、強い力で両手が封じられ、それをリフトのような腕力で強引に揚げるのではなく、特異な「術」を用いて揚げる業である。
 大東流愛好者の中には、こうした地味な基本極意を嫌って、派手な遣い用もない高級技法の蒐集を行ったり、古典の時代遅れの骨董品的技法を蒐集している人が多いが、これは単なる「型」であり、実戦に何ら役立つものではない。

 またこの合気揚げが修得できないと、幾らこうしたものを研究しても、絵に描いた餅であり、貴重な人生において無駄な時間を費やしていると言う事になる。
  大東流合気揚げの特徴は、第一に「力貫」(ちからぬき)であり、第二に「肩球」(かただま)である。また肩球の遣い方には多くの秘術があり、これは直接口伝を受けながら教えてもらわないと、幾ら頭で考えても到底解るものではない。

 これを行うには、木刀の素振りが必要であり、肩に筋肉や脂肪を着けてはならない。
 毎日朝晩五百回程、素振りをし、一日も欠かさず実行する事が大切である。

 全く素人の人が、木刀素振りを始めると、2〜3日で掌には豆が出来のやがて皮が破れる。それでも毎日欠かさず振り続けていると、新しい皮が出来始め、一ヶ月目には肩の筋肉が落ちはじめる。それに反比例して腕がへら鮒形(【註】剣道愛好者の腕が断面は「丸太状」に太くなるのに対し、合気揚げの為に木刀素振りをした人は、断面が楕円で「へら鮒」のような腕の形となる)に太くなり、次第に胆力も養われてくる。
 これは極めて日本刀に近い「反り」のある木刀を振る事で、竹刀とは異なる結果が出る為である。

力抜きの秘術

▲力抜きの秘術(クリックで拡大)

 合気揚げは、単に腕力の力によるものではない。しかし、また、催眠術のような相手の心理につけいるものでもない。極めて、物理的であり、丹田(西郷派大東流では経絡上で言う「丹田」や「気海」ではなく、臍下から三寸、更にそのから体内へ三寸の位置に有る「真丹田」を指す)からの内圧と、腕の角度を自転車のフレームのようにする力学的な動かし方に特異性があり、これを養う為に木刀を素振りすると言う事は、合気揚げを会得する、極めて近い、「近道」となるのである。

 この場合、素振りによって完成された肩の部分は鎖骨が剥き出しの「骨と皮」の状態でなければならない。ここに、少しでも筋肉や脂肪が付いていると、到底合気揚げの「揚げ」は会得することが出来ず、形だけの合気揚げで終わってしまう事が多い。

 また、大東流愛好者の中には、相手に手を握られた場合、その手に「緩み」を齎す為に、上下前後に振って揚げようとするする人がいるが、これは合気揚げの為の、小手先のテクニックであり、本当の合気揚げに繋がる「術」ではない。


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