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●千島学説と『腸造血説』

 現代は不況にありながらも飽食の時代であり、食文化はある意味で慎みを忘れた、乱れたものになっています。一様に、猫も杓子もグルメを気取ります。しかし、これは同時に日本人の食体系の破壊でもあります。
 そして食生活そのものを考えた場合、実は、日本が高度成長期に差し掛かる以前の、いわゆる「貧しい時代」という時期の食生活の方が正しかったのではないかという疑問が生まれます。
 多くの日本人は、当時、木綿(もめん)の粗衣を纏(まと)い、粗食・少食に耐えていた時代です。
 しかし今日、現代人は「文明」という脂肪膨れの贅肉を躰(からだ)に纏った為に、食生活は乱れ、慎みを忘れて、「文迷」の時代に突入したといえましょう。

 生活空間や周囲の環境は、便利さと最適さと快速さで、文明という恩恵に預かりながら、一方で、これと引き替えに、自然破壊や海洋汚染が進み、とりわけこうした文明の恩恵は、現代人に二酸化炭素問題で深刻な影を落し始めました。そして更には、「文明の恩恵」イコール「軟弱な体躯」という図式ができ上がったのです。

 さて、人体は「食の化身」であると言われます。その人が何を食べているかで、その人の肉体を作り上げ、その内面的な人格や、そして頑健と言われる心身を構築しています。
 そして、これを更に証明するものが、一部の医学者で唱えられている『腸造血説』です。

 この『腸造血説』は、現代医学の定説となっている『骨髄造血説』(現代医学では骨中の腔所をみたす柔軟組織を骨髄とし、赤色髄は造血組織で、赤血球・白血球・血小板などがここで形成され、黄色髄は脂肪組織から成る)を根底から覆すもので、「血球は腸で造られる」とし、食物が消化器で血液となるとした学説です。この学説を唱えたのは、千島喜久男医学博士で、これを「千島学説」と言います。

 この千島学説によると、現代医学の定説である、生体を構成している細胞は、細胞自身が分裂して増殖するという説に対して、細胞は細胞自身で分裂増殖されるのではなく、赤血球から新生して細胞ができるという学説を掲げ、赤血球は消化器である腸で造られるという『腸造血説』を掲げていることです。これは東洋医学観の、「食べたものは血となり肉となる」という古代人の医学観を彷彿(ほうふつ)とさせます。

 しかし今日では定説の、血液は骨髄で造血されるという考え方が主流で、現代栄養学もこの説を強く支持しています。
 ところが今日、『腸造血説』は異端視され、現代医学では定説の『骨髄造血説』が広く支持されており、しかし残念なことに、この現代医学の学説が主流となっている為に、本来変わるべき医学上の問題や課題も無視されたままで、従来通りの誤った治療法が用いられているのが実情です。

 『骨髄造血説』を最初に唱えたのは、1868年、ノイマンとビッズオセロという二人のユダヤ系の医学者で、彼等は鶏(にわとり)や鳩(はと)等で実験を繰り返しその研究結果から、血球を生成する器官は骨髄(こつずい)や脾臓(いぞう)やリンパ節等であり、ここで造血がなされいるのではないかという仮説を挙げ、特に骨髄は、造血作用の大半を占めるという骨髄造血説を打ち出し、これが現代医学の考え方に定着しました。

 しかし近年になって、この従来の医学上の定説に疑問を持ったのが千島喜久男という医学者でした。
 彼の研究によると、「健康な生体(成体)では骨髄は脂肪で充満していて、造血像等は確認できなかった」としているのです。
 そして彼は「註釈」をつけ、「但し、大量に失血の痕(あと)や、絶食を行うと骨髄中に赤血(erythrocyte/血球の一。単細胞で、ラクダ以外の高等哺乳動物では成熟途中で核を失う。ヘモグロビンを含むため赤色を呈する。人の赤血球は骨髄で産生され、両凹面の円盤状)が多く見られた。それをもって、骨髄で血液が造血されると断定するのは訝(おか)しい」と述べ、「健康で栄養状態の良い一般人に、病的な状態の現象を適用するのは、常識的に考えても訝しい」としたわけです。

 ユダヤ人の説いた、二人の医学者達の掲げた『骨髄造血説』は、生体が病的な時に、あるいは減食状態の時か、絶食状態の時に適用して、細胞から赤血球に逆分化にている現象を見ているのであって、逆方向の現象を実験結果からまとめ挙げたものに過ぎなかったのでした。
 しかして現代医学は、この全く逆方向現象を定説と決め付け、これを現代医学の基盤にしているのです。
 この事は、現代医学が根本的に間違った方向に進んでいるという現実を物語ったものではないかという疑いが残ります。

 もし、骨髄造血説という学説が、コペルニクス時代の「天動説」としたら、現代医学は現代栄養学同様、間違った方法で医療に従事している医療制度を作り上げたということになります。
 そのよい例が、企業の健康診断で行われている「ガン検診」です。
 ガン検診において、早期発見、早期治療が叫ばれます。X線等を当てて初期状態のガン細胞を探します。

 しかしこの被爆の際に小型であったガン細胞が、大型化することがあります。しかし、こうした被爆によるガン検診の危険を訴えても、これはレントゲン技師や医療機械技術者らの失業に繋(つな)がりますから、危険な被爆を体験させながら、愚かなガン検診を一向に中止する動きはありません。それどころか、マスコミを通じて早期発見、早期治療を大々的に宣伝しています。

 そしてこの現代医学と、がっちりと組み合わされたものが「現代栄養学」であり、両者は合体することで、食文化を狂わせ、また、国連食糧農業機関(FAO/Food and Agriculture Organization of the U. N./世界の食糧および農業問題の恒久的解決を図ることを目的とする機関)も一緒になって、誤った方向に、世界人類を導こうとしているということになります。

FOAの示す食品別ケミカルスコア。このケミカルスコアの中には、「肉を食べないとスタミナがつかない」、「牛乳を飲まないと子供は成長しない」という迷信が作り上げられている。問題は、肉や乳製品や卵等のタンパク質は、必須アノミ酸のバランスが良いと主張することにあり、最初から肉や牛乳や卵等の動蛋白食品は「良質の蛋白源」ということを前提にしたものであり、逆に玄米や大豆では、なぜ基準にしないのかという疑問が残る。仮に、大豆の蛋白質を組成しているアミノ酸を基準にすれば、その算出された数字は全く違ったものになってしまう。
 つまり、肉や牛乳や卵に含まれる「蛋白質が良質」であるということであって、肉や牛乳や卵が「良質な食品」であるということを証明するものではない。実際にそれ等の食品に含まれる成分のコレステロールだけを見れば、極力食べないようにしなければならないと言うのは一目瞭然である。

 この大きな誤りは、その第一が、骨髄中で血芽球(赤血球の母体)は当然の事ながら細胞分裂することはありません。
 その第二に、骨髄造血説では細胞は分裂によって、増殖するという定義を打ち出しているのですから、母体である発芽球が分裂して、赤血球にならなければならないのですが、その分裂現象は一切見られませんでした。

 そして第三は、無脊椎動物には脊髄が存在せず、特に、下等動物は腔腸や消化器で造血が行われています。その上、組織や器官が単純であり、進化論的に言っても骨髄造血説は成り立たず、また、生物現象に飛躍はありえないとするのが進化論であり、生物現象が発生した歴史や系統から探究しても、造血は腸造血説でなければなりません。

 しかし現代医学は、下等動物のそれは哺乳動物や、人間に対しては腸造血の理論が当てはまらず、高等動物については腸造血説ではなく骨髓造血説が正しいとされて、未(いま)だに、腸造血説が医学者の間で冷笑されたままになっているのは何とも悲しいことです。

 果たして、高等動物における脊髄造血説は正しいのだろうか、という疑問が繰り返し起こってきます。
 現代医学はこの説が正しいとして現代の最先端医療が続けられており、これが時代を経て、コペルニクス同様天動説が間違いであると証明された時、現代医療の在(あ)り方は、根底から覆えってしまいます。
  即ち、誤った考え方で現代医療が行われいるということになり、同時に、これを背景にした現代栄養学も同罪の罪を免れる事はできません。

 さて、人体は「食の化身」であるといわれる所以(ゆえん)を繰り返し述べてきました。
 これを腸造血説の観点から述べると、赤血球造血は、系統的にも発生的にも腸内の繊毛(じゅうもう)の部分でなされるとし、進化論では下等動物は腔腸や消化器で造血がなされ、個体発生的な人間の場合でも第一段階では卵黄嚢の繊毛で行われ、これを「卵黄嚢造血」といいいます。

 そして第二段階に入ると、卵黄の少ない哺乳動物や人間では、子宮内面の子宮壁にある血管の開放端から出血し、その血球モネラから胎盤絨毛ができ、絨毛壁細胞から血球ができます。妊娠中の胎児は胎盤の絨毛で母体からの赤血球を吸収し、それによって、黄嚢絨毛や胎盤絨毛の壁細胞を新生します。

 その結果、絨毛壁細胞が形成され、その成熟によって内部の無核の赤血球十数個と胞子形成する過程で新生し、それが連続して血管となり、臍帯の静脈から胎児の体内に運ばれ胎児を形成する細胞の母体となっていきます。これが「胎盤造血」のメカニズムです。これが第三段階の過程に当たります。

 そして出産後は母親からの血液補給が断たれるので、新生児は母乳によって、その消化産物から腸粘膜の絨毛を形成し、以降絨毛で造血を行っていくことになります。これが「腸造血」のメカニズムです。
 以上を要約すれば、第一段階は卵黄嚢の絨毛で、第二段階は胎盤の絨毛で、そして第三段階は腸管内の絨毛で造血されるということであり、これを植物の当てはめて考えれば、人体における腸の絨毛は、食物における根毛に相当し、動物は腸壁内の絨毛で、植物は根を伝播して、体内に栄養素を吸収するメカニズムになっています。

 つまり人体は「食の化身」であるという、東洋医学の説が、ここで再浮上するのです。こうした事実が医学者の間で冷笑され、間違った仮説として考えられていることは大変に残念なことです。



●赤血球母細胞は腸壁で発見された!

 千島学説を支持する森下敬一医学博士は、「赤血球母細胞は腸の壁で発見されたことが『腸造血説』のキメ手になった」と述べています。
 赤血球母細胞はその名の通り、赤血球を生み出す母親の細胞であり、この大型の細胞が腸の壁の「腸絨毛組織」だけの存在することが実験によって確認できたのです。

 この様子は顕微鏡写真に収められ、食べ物が赤血球母細胞に変化し、発展していく総てのプロセスが記録され、赤血球母細胞から赤血球が生み出され、血流に送り出されていく事実が確認されたのです。
 これは間違いなく、血液は腸で造られているという、「造血のメカニズム」が確認できたのです。

 ところがあえて、「血液は骨髄で出来ているという説」を掲げるのは、何故なのでしょうか。
 骨髄とは、骨中の腔所をみたす柔軟組織のことです。

 『骨髄造血説』によりますと、「赤色髄は造血組織の中枢を成し、赤血球・白血球・血小板等がここで形成され、黄色髄は脂肪組織から成る」とあります。
 そして造血幹細胞を取り上げ、「赤血球・白血球・血小板等の血球(血液細胞)のもとになる細胞と定義し、骨髄や造血組織に存在する多能性幹細胞が骨髄系やリンパ系の幹細胞に分化し、さらに諸種の血球に分化する」としています。

 これによりますと、造血の場が「腸」ではなく、「骨髄」と定義され、「赤血球新生のメカニズム」を頭から否定しています。これは何故なのでしょうか。
 ある程度の科学知識を持つ人であれば、誰が考えて見ても造血は腸でなされているということが、容易に分かるはずなのですが、これをあえて否定し、誤った理論に学識経験者の正統性をつけて、これを否が応でも認めさせるという意図が隠れています。

 動物の「からだ」というのは、下等なものから高等なものまで、三つの基本的要素によって構築されています。これは人間といえども例外はありません。
 基本的な三要素は、まず「体細胞」と「消化器官」と「血球」の三つです。
 これを更にプロセス順に註釈しますと、

その第一、 人間は食べ物を摂らないと生きていけない。
その第二、 その食べ物は消化器官で消化される。
その第三、 それがやがて血球となって体細胞を作り上げる。
その第四、 消化器官で消化された食べ物と体細胞への移行過程において、これをつなぐ細胞として「遊走性をもった血球」の存在がある。

 以上に随(したが)いますと、血液が作られる場所は消化器官以外において、他にはありません。
 それなのにあえて、現代医学や現代栄養学、更には生物学までが、『骨髄造血説』をとっているのです。そしてこの考え方で現代医療を見た場合、根本的に間違っているばかりでなく、本来の生体における生理機能の本質も掴(つか)めませんし、病気対策も立てられないことになります。
 そして現状は、この『骨髄造血説』が障害となって、医学面や健康面において、医療は間違った形で展開されているという現実があります。
 しかしこれに、警鐘を鳴らす医学者は圧倒的に少ないというのが実情です。



●浄血の原理

 血液の役割は、一般的に酸素や炭酸ガスを運搬することであると考えられています。しかし、これは単なる補足事項で、真当(ほんとう)の役割は別にあります。それは赤血球自体が全身を巡り、体内の総ての細胞へと変化していくことなのです。

 つまり血液は、体細胞へと発展します。これを「血球の分化」と言います。
 そして、これまでの医学常識を覆(くつがえ)して、「白血球は、赤血球から新生される」という研究が確認されているのです。

 さて、ここで白血球の新生過程を述べて見ましょう。この新生過程は、その時々の条件によって異なりますが、これは大きく分けて三つあります。

 その第一は、「発芽方式」と言われるもので、赤血球の核の表面に小さな突起部が発生し、それが膨らんで、ついには赤血球膜を破って飛び出し、これが白血球になります。
 その第二は、「流出方式」と言われるもので、赤血球膜が破れて細胞質が流れ出し、それが白血球へと発展します。
 その第三は、「分割方式」と言われるもので、赤血球自体が適当な大きさに千切れて、各々の断片が白血球になっていきます。

 この三つのケースは、いずれも赤血球が白血球に変化することを証明しています。
 一般に信じられている医学常識では、白血球というのは病原菌が侵入した場合、それを食べてしまうという働きがあると信じられています。しかし、これは断片的な結果のみを短絡的に繋(つな)ぎ合わせたもので、白血球の本当の働きは、もっと別のところにあります。

 ところが、今日の医学常識では、白血球(leukocyte)を血球の一つと定義し、その種類に「無色・有核の細胞で、リンパ球・単球・顆粒白血球等を上げ、赤血球よりやや大きいが、数は遥かに少なく、人の血液1立方ミリメートル中に5000〜7000個が存在するとしています。

 また血液中だけでなく、他の諸組織の中にも移動し、単球や顆粒球はアメーバ運動を行い、細菌や異物を細胞内に取り入れて殺し、消化する食作用をもち、リンパ球は免疫抗体の産生、免疫機能の調節にあずかり、更には、高等脊椎動物では骨髄が主な白血球産生の場である」と定義しているのです。
 しかし、白血球が体細胞へと変化するとは、一言も述べられていません。
 もし、白血球が体細胞へと変化しないのであるならば、これまで東洋医学で言われた「肉体は食の化身である」という真理が崩れてしまうことになります。

 また、多くの先学者達が、白血球は、筋肉や軟骨、上皮、腺、骨等の各組織に変化していく発展段階の証明を幾度も確認し、「白血球は分化能力を持っている細胞である」と認めながら、その結論として「赤血球は白血球を新生して体細胞へと変化する」という事実を確認しています。
 しかしこれを論ずると、医学者として冷笑されるという現実があります。これは何故でしょうか。

 したがって、こうした事実を確認しながらも、これをあえて否定せず、黙認して、沈黙を保っている医学者も少なくありません。特に、大学病院などの大病院に医局として勤務している、助教授や講師や助手たちは『腸造血説』を掲げた場合、この白い巨塔での出世の見込みはないとされています。そして、今日に至っても、こうした封建制度は医療の場で根強く生き残っています。
 あなたはこの裏側に、政治的な匂いのする陰謀を感じ取ることは出来ないでしょうか。



●生体における基本構造

 赤血球が食べ物によって造り出され、やがてそれが白血球へと変化し、白血球が体細胞へと変化するという分化構造が以上の説明でお解り頂いたと思います。

 この基本構造を更に詳しく述べると、第一段階は「食」であり、食べ物が消化されることによって腸壁部の腸絨毛で一旦ここで赤血球母細胞が作り出され、その母細胞内から放出されて血管内部に送り出された赤血球は、躰全体を循環して体細胞へと変化する過程に入ります。

赤血球(電子顕微鏡写真)
絨毛に広がる毛細血管(×150)
微絨毛(×15000)

 第二段階は「血」であり、組織細胞に辿り着いた赤血球や白血球は「分化」という変化・発展の段階に入り、まずは周辺の体細胞から強力な影響を受けて誘導され、その場が肝臓ならば肝細胞へ、腎臓なら腎細胞へ、脳なら脳細胞へと周囲の環境に順応して分化を遂げていきます。

 第三段階では「体細胞」への発展で、破壊された体細胞の肩代りをしたり、壊れた組織の修復をしたり、このようにして血球から作り出された体細胞が生体を造り上げるという構造に至ります。
 そして重要なことは、現代医学や生物学が、今日教えているような「細胞分裂は一切起こっていない」ということです。

 こうしたプロセスを更に繰り返しますと、食物が取り込まれて腸内に入り、腸絨毛(柔毛)より吸収されて赤血球母細胞ができ、母細胞は赤血球を放出して血管内を駆け巡り、本体である内臓や筋肉、骨や皮膚という組織器官を構成し、それが体細胞へと発展するというのが生体のメカニズムです。

 つまり「肉体は食の化身である」という真理が蘇(よみがえ)り、「食の世界」イコール「血液の世界」と言う図式が成り立ち、「血液の世界」イコール「体細胞の世界」という構造式につながります。
 したがって躰の素材は「食」ということになり、食生活次第で健康も不健康も同時に内包されているということになります。
 これを考えていくと、現世の様々な不幸現象は総て「食の世界の狂い」から生じているという結論が導き出されます。