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●現代栄養学に翻弄される現代人

 現代医学は、物質的医療を中心とした科学的根拠(特に抗生物質や物理的な檄滝療法)を支柱として確立された学問です。したがって目前の緊急を要する病苦の対策としては、非常に大きな側面を持っています。
 ところがそれ以降の慢性病や、一生涯に亘っての個人全体の心身の健康改善と云った面に関して、それを永い目で見れば、本質的な対策になり得ていないように思えます。慢性病には、殆ど効果がないといえます。
 それはガン発症などの治療に、大きな効果を上げていないからです。

 現代西洋医学で、厚生労働省が「第三次がん10カ年総合戦略」(通称「ガン撲滅計画」)がスタートした年は2004年からでした。これはアメリカの「ガン撲滅計画」に追随したものでした。この計画は、時の大統領リチャード・ニクソンが「人類が月に着陸したように、20世紀までにガンを地上から抹殺する」と宣言したことから始まりました。
 計画の総てには、アメリカ的な好戦的な傲慢(ごうまん)な態度が窺(うかが)われます。

 この当時の宣言の今日の世界情勢に起き変えれば、奇しくも、現在のアメリカの傲慢に反映されているではありませんか。
 アメリカと言う国は、自分達の利益の為に、「邪魔者は殺せ」という主義をそのまま地でいくような国です。また、そうしたアメリカの後を追随するのが、今日の日本です。

 果たしてアメリカの後を追随した結果、例えば、厚生労働省が宣言する「第三次がん10カ年総合戦略」は功を奏しているでしょうか。
 そして、現在アメリカは「ガン撲滅計画」から新たな脱皮を行い、アメリカ医学界は180度方向転換し、これまでの正規の医療に変り、今日では代替医療が主流になりつつあります。つまり、ガンの三大医療である、摘出除去手術、放射線療法、抗ガン剤による化学療法から、代替医療へと変化しつつあるのです。しかし、このことは日本では殆ど報道されません。

 また、一方に於いて、アメリカを模倣し、何でもアメリカに追随する日本ですが、医学界の変化と言う点においては、殆ど追随していないと言う不思議な現象があります。これは、日本がご都合主義で政策を展開していると言う事が見え隠れしています。日本では、アメリカに追随して代替医療には重きを置かないという点が浮上して来るのです。それは、医療に携わる外科医やレントゲン技師、更には製薬会社や医療産業関係の従事者などの職が奪われるということを懸念しての政策のようにも思えます。
 その一方で、現代西洋医学は限界に達していると言う点が明白になって来ます。特に、慢性病に於てでは、です。これまで優を誇っていた、現代西洋医学慢性病には無力を曝(さら)しています。

 つまり物質的な療法にも、科学は万能ではなく、ある程度まで来ると限界があると云うことなのです。
 私たち日本人は、昭和30年代の高度経済成長の波に乗り、物質的には非常に豊かな生活を享受することが出来ました。特に、多くの日本人は衣・食・住に関して、非常に豊かになりました。しかしその反面、これを機に、日本人は徐々に体質を劣化させていきます。老若男女を問わず、心身ともに脆弱な体質に変化していきます。

 一年365日、エアコンの効いた住居、農薬や着色料に汚染された加工食品の常食、自然と懸離れた不摂生な生活態度、また、これが元凶となって派生する生活習慣の盲点等、いちいち挙げるまでもなく、現代日本人の健康状態は一億総半病人とまで極論されるような状況の中で生活を余儀なくされています。
 こうした悪循環の中で、現代医学や現代栄養学を盲信する多くの日本国民は、訝(おか)しな食肉や乳製品などの食理論に振り回された生活をしています。

 慢性病については、現代医学を妄信的に信奉することの危険性が囁(ささや)かれ、現代栄養学と厚生労働省がスローガンとしている「早寝早起き朝ご飯」というお題目は、西式健康法の「朝食抜きの一日2食主義」を頭から否定する食指針となっています。

 現代栄養学や現代医学は、科学の常識の範囲で「朝食抜き(午前中の一時的な断食)」は、健康上非常に有害であると断定しています。これはプラスの栄養学に立った観点からです。
 一方、西式健康法をはじめとする、以前から日本に伝承されて来た食養道では、朝食抜きの食養効果の有効性を高く評価しています。

 現代栄養学や現代医学が「朝食抜き」の一時的な断食を否定するところは、朝食を抜くと昼食と夕食に纏(まと)め食いをすると言う、一食分の食事量の多さを警戒し、これを朝食抜きの欠点に挙げています。

 しかし本当の一日2食主義は、朝食を摂らず、朝食と云う排便タイムに固形の食事をせず、玄米スープか薬用茶を飲用して、朝食を摂らないということです。したがって、朝食を抜いても、昼食や夕食は決して量を増やさず、一日2食の「粗食・少食を徹底する」こと云います。

 現代医学や現代栄養学は、「まとめ食いの懼(おそ)れ」を、肥満の元凶になるから、よくないとしているのです。したがって「まとめ食い」という考えを止めれば、一日2食の「粗食・少食を徹底する」ことについて、何の科学的根拠もないと言う事になります。要するに、一日2食にすれば、「まとめ食い」の懼れが出て来て、これが肥満のモトであると警告しているのです。

 しかし、一日3食主義がよいのか、一日2食主義がよいのか、これを現代栄養学風に云うと、一日の摂る食事量が同カロリーであるならば、一日3食主義より一日2食主義の方が健康上は優れていることになります。それは一食分の食事をする時間がなくなりますから、内臓の疲労はそれだけ軽くなり、また、食事をした後の眠気の誘いや、「腰骨の関節が弛む」という腰痛現象もなくなるからです。

 また、同カロリー摂取の一日2食主義は、現代人が抱える肥満の原因を取り除き、高脂血症やそれに起因する動脈硬化、糖尿病、心臓病等の病因も取り除いていきます。

 現代人に多いのは、間食や夜食をすると云った一日4食主義や5食主義に病因の根元があり、この結果、年配者に限らず、若者でも胃潰瘍や十二指腸潰瘍に悩まされている人が少なくありません。これは午前中に排泄神経が重点的に働く時間を無視して、朝食を摂るという元凶から来ています。

 本来この時間は、排泄神経が働く、「排泄」と「活動」の異化作用の時間です。今日一日のエネルギーが、昨日の食事により今日一日分が賄(まかな)われます。したがって、今朝食べた食事が、そのまま今日一日の活動エネルギーにはならないのです。むしろ朝食を食べた事により、腰骨の関節が弛み、腰痛の原因をつくって、朝食後の動きは「のろま」になります。

 人体と云うのは車や機械と異なりますから、燃料を詰め込んでも直ぐにエネルギー化して、作動すると言う道具とは異なるのです。少なくとも、食べたものが活動エネルギーとして作用するには8〜9時間の時間を要するのです。したがって、今日一日のエネルギーは、昨日の夕食によって、しっかりと用意されているのです。

 朝食を摂取する事により、血糖値を上げると言う目的ならば、朝食時に固形の食事を摂らず、液体の玄米ジュース等で内臓に送り込んだ方が内臓の負担も懸(かか)らず、液体であるから、極めて吸収も良い分けです。

 排泄神経が重点的に働く時間に、食事を摂ると、胃腸や腎臓から前日の老廃物や毒素が体内から排泄される働きを阻害します。また、食事後は、執拗な睡魔(すいま)に襲われ、動きが鈍くなります。こうした状態が続くと、「鈍重肝臓」の病状が顕われて来ます。これは肝臓の状態が弱った病状です。

 本来、肝臓と云うのは、空腹時に急に食事をして多喰いをすることを繰り返すと、現われて来る現象で、朝食を摂ると云うことは、一応12時間以上の空腹時から食事をする行為であり、この空腹時に急に、無理をしても朝食を詰め込むという行為は、次第に肝臓の機能を弱めていきます。

 中には、自分が殆どアルコールを飲まないのに、肝臓が悪いと言う人が居ますが、これはこの人が、現代栄養学の云うように無理して朝食を詰め込んだ為に、「鈍重肝臓」の病状が進行した為です。



●断食は本断食よりも、断食明けの恢復食のコントロールが難しい

 断食は効果も絶大ですが、一方、危険も多く、特に断食後に顕われれるリバウンド現象は、人間が如何に餓鬼に陥るか、これを明確に顕わします。特に、本断食が終り恢復食(かいふくしょく)に入って、重湯から三分粥、五分粥、七分粥と進む過程において、少しでも食を口にすると、酷い空腹感に襲われます。

 これは欲の塊である人間であるから仕方ないことですが、断食後は、殆どの人が「浅ましき餓鬼道」に陥ります。猛烈な空腹感に襲われ、精神的に負けてしまいます。もし、こうした感覚が強くなり、こうした欲に負けてしまうと、その人の行った断食は失敗であったと言えます。

 また、断食後、一時的に胃腸の機能障害が発生します。胃アトニー症、胃下垂症などの人が断食をした場合、あるいは自意識過剰の感覚によって不相応な長期断食をした場合、こうした症状が顕著に表れます。つまり、満腹中枢が狂わされた為に多喰い傾向に趨(はし)り、激しいリバウンド現象に揺すぶられます。

 病気の自然治癒の為に、断食に期待して断食療法を選んだ場合、断食者本人は断食日数が長ければ長いほど、その効果も大きくて、体質改善も徹底されると考えます。
 しかし慢性病の多くは日頃の不摂生によって祟(たた)った病気ですから、普段は不摂生の限りを尽くしておきながら、その不心得を反省せず、断食によって一新を図ろうとする考え等は、土台、生兵法であり、そこに無理が生じることは否めません。

 則ち、本断食はやり終えても、その後の恢復食で失敗してしまうと云うことになり得ないのです。そうなると、断食をしたこと自体を後悔する結果となります。
 したがって、断食そのものより、断食明けの恢復食の戻し方が非常に難しいと言えます。



●断食終了後の温冷浴の大事

 健康の人体に顕われるシンボルは、快食・快便・快眠です。しかし、この三つが順調に処理できて居る人は少ないようです。
 そこで三つのうちで、一つでも障害があれば、断食を試す価値があるのですが、断食は単に自己流で行ってもあまり良い効果を見出せないばかりか、逆に悪影響すらが顕われて、かえって病気を悪化させることもあります。

 したがって、断食を行う際はその準備として、漸減食期間を設けると言うことが大事になります。充分に漸減と云う補食期間をとり、漸減食期間の最終日には少量の重湯だけを食べて本断食に入らなければなりません。また最終日の重湯の日には、腸の中を掃除する為にミルマグ等を服用し、宿便の排泄を促さなければなりません。

ミルマグ

 また、無事に本断食をこなし、恢復期間に入ると、今度は断食を始める漸減食期間とは、逆のコースを辿って、徐々に、注意しながら慎重に食事を摂っていかなければなりません。そして断食は一度しただけでは不充分であり、短い断食を繰り返し行う事が肝心です。

 そして断食終了後は、更に体質を改善させる為に、「温冷浴」を実践することが大事です。温冷浴とは、暖かい風呂と、水風呂の二つを用意し、それを交互に浸かり、毛細血管を開発する体質改善法です。
 一般に温冷浴を始めると、最初は水風呂の冷たさに胸が苦しくなり、また頭痛を感じるものです。ところがこれを繰り返して数日経つと、そうした不快感は一切無くなり、爽快感が訪れます。

 断食と温冷浴により改善された体質は、まず風邪を引かなくなります。
 断食と温冷浴を組み合わせると、一回目の断食よりは二回目の断食の方が、より体質は健全となり、二回目よりは三回目と更によくなっていきます。そして三回目以上を経験した断食実践者は、特に胃腸の機能が良くなり、数年に亘って悩み続けて来た病気はすっかり消滅してしまいます。

 しかし、こうした体質改善までに漕ぎ着けることのできる条件は、断食前の下準備が物を言う事は一々挙げるまでもありません。断食の効果が大いに期待できる条件は、断食前の漸減食期間の準備にあり、規定通りに実行することにあります。しかし、これが中々実行できません。



●断食中には瞑眩反応が起る

 断食で失敗する人の多くは、漸減食期間を規定通りに実行せず、昨日までに普通食を食べていたのに、翌日からは急に漸減食をし、更にその二三日後には、重湯にして断食に突入するなどの愚で、無鉄砲な断食をする人は、既に計画した断食自体が失敗の計画であり、これは非常に危険なことであると言えます。

 何回断食を行う場合でも、本断食の前後に補食の漸減食期間を設ける事は大事であり、これを省略したり無視したりすると、急速に行った断食では、断食中に腸閉塞などを起して、命に関わる危険な状態に曝(さら)されます。
 また急速な断食は、単に肉体的な異常が発生するばかりでなく、瞑眩めんけん/目が眩むことあるいは眩暈など)反応症状として、最も頻度に起るものは悪心と、それに伴う嘔吐です。眩暈(めまい)と共に、激しい嘔吐(おうと)が起ります。

 特にこれまで大食傾向にあり、過食を続けて来は人はこの症状は激しく起ります。こうした人は、胃が荒れているので、些細(ささい)なことにも嘔吐が起り、また眩暈などを伴って、時には意識を失うことがあります。これは胃が荒れていて、また、その他の内臓の部位にも、微細な疵(きず)や、潰瘍(粘膜の一部がただれている状態)などの炎症がある為です。

 こうした瞑眩反応を防ぐ為にも、断食前の漸減食期間は正しく守り、できれば少し長過ぎるくらいの漸減食をして補食期間を長くしなければなりません。こうした充分に準備した断食は、本断食に入っても非常に事故が少なく、スムーズに断食が行えます。こうした断食をすれば、身体の内臓の各部位にあった疵や炎症は急速に治っていくものなのです。しかし、やはり多喰い傾向に合って胃が荒れていた人は、治る為の瞑眩反応が起るのはやむを得ないことです。

 胃が荒れて居る人は、嘔吐やゲップが頻繁(ひんぱん)に起ります。また胃以外にも身体の何処かに故障があれば、瞑眩反応は必ず起るもので、断食中には反応症状として悪心や嘔吐が起ると云うことを覚悟しなければなりません。



●空腹トレーニングの大事

 現代という時代を考えてみると、誰もが「よき老後」を得る為に働いています。現代人の働く目的は、歳を取った将来、働かなくて済む為に「働く」というものです。つまり、働かない為に「働く」という大きな矛盾です。

 しかし、歳をとったら働かない。だから今は働くという矛盾に、殆どの人は気付いていません。矛盾に気付かないまま、自覚症状のないまま、若い頃は働かなければならないと云う世間風の常識に流されて働いています。

 働くこと自体、人間に課せられた義務ですから、決して悪い事ではありませんが、働かない為に働くと言う矛盾は、必ずその皺(しわ)寄せが近い将来に襲って来ます。働かない為に働くと言うツケは、現代人に病気と云う形でツケを回して来ます。現代病等は、そのツケの最たるものではないでしょうか。

 楽な、働かないで済む老後を夢見て、あるいは各種年金が降りる裕福な年金生活を夢見て、現代の若き就労者は働いています。これが老後の生活設計です。将来の糧(かて)、老後の糧を積み上げる為に働いています。しかし、こうした働き方は、必ずそのツケが、近い将来に回って来ます。

 それは「物質的に豊かになる」ということを目的にしているからです。精神的な心の拠(よ)り所を需(もと)めるより、物質的な豊かさを歳を取った将来にも満喫するということで、現代人は働いているのです。これは働く目的を見失っている行為と言えましょう。こうした状態に陥っている時、その心の隙(すき)を突いて、様々なストレスや現代病が襲って来ます。年金を受けるまでの年齢を待たずに、死んでしまう事もあるのです。

 物質的な豊かさの追求は、必ずそのツケが近い将来に回って来ます。
 飽食に浸り、美食の恩恵に少しでも預かろうとするのは、物質的豊かさを求める結果から起るものです。こうした食生活を追い求める考え方は、病気を招き寄せる元凶となります。

 医者任せの健康管理や、現代栄養学の過信は、健康から遠ざかる元凶と云わなければなりません。健康の基本は正しい食生活の在り方を知り、それを実践しなければなりません。

 通俗的な養生訓に「腹八分に医者いらず」という言葉がありますが、少食を論ずる時にこの諺(ことわざ)がよく惹(ひ)き合いに出されます。しかし、こうした言葉を用いながらも、「腹八分とは一体どういう量なのか」これを明確に説明できる人は殆ど居りません。
 そこで現代栄養学的な考え方に陥って、この学問で云う、「標準カロリー」を摂っておけば間違いなかろうと言う結論に落ち着く分けです。

 しかし、常識的に思えるこのような世間の「分別知」は、実は邪魔になるばかりなのです。
 それは例えば、断食をしますと、その効果により、大量の宿便が腸内から排泄されます。これにより、これまでの不調であった消化吸収率も好転されますから、従来の食事量より少なめにした食事量で充分に遣っていけ、省エネ体質になって居ますから、当然そこには、「食事の量を減らす」という行為が顕われなければなりません。

 しかし、「食事の量を減らす」という食生活の従来の生活状態ですと過食の状態になり、食べ過ぎていることになります。
 多くの現代人は現代栄養学の標準カロリーに余りにも惑わされ、これを疑いなく信奉する余り、自分の身体の要求以上に食べ過ぎている実情があります。

 人間の腸壁の絨毛には、「テニスコート2面くらいの宿便」が溜まりに溜まっています。この宿便を排泄する為には、粗食・少食に徹した正食を一年以上続けるか、断食を決行してこれを取る以外ありません。
 断食を一度決行するだけでは宿便は中々取れず、二回三回とかされるごとに、宿便が排泄されていきます。この宿便が排泄された時、人は「スッキリ感」を覚え、爽快を感じるものです。病禍が躰の芯(しん)から治って来たと言う自覚が持てるものです。

 現代人は、現代栄養学の示す通り、標準カロリーの計算の仕方で、食品摂取を行い、更にその摂取には肉や乳製品の動蛋白摂取などの考え方がふんだんに盛り込まれ、「肉と野菜をバランスよく摂る」などという食指針が常識化されこれは分別知として作用している為、多くの人は過食気味で、「鈍重肝臓状態」になっています。

 この鈍重肝臓状態とは、既に述べましたが、肝臓病でない、いわゆる疲労した状態の肝臓の事を云います。鈍重肝臓状態になって来ますと、全身の倦怠感が起り、遣る気や根気が失せて、胃部の膨満感、頭重、イライラ、不眠、肩凝り、腰痛、頭蓋骨の関節の弛みなどが顕われ、既にこれだけで肝臓病予備軍としての病状を総て取り揃えたことになります。特に寒い時には頭痛や肩凝りなどが起り、特に頭痛の場合、側頭上部の痺(しび)れるような、また毛細管が切れるような痛みや、目詰まりしたような違和感を感じます。

 また夏場には大量の汗をかき、動きの遅いのが自分でも自覚されるようになります。こうした人は鈍重肝臓状態で、既に肝臓病予備軍としての前兆を示している事になります。食べ過ぎによって胃腸の機能が低下し、肝臓の機能が低下すると、解毒作用が失われ、平均体重より増加の傾向を見せて、ゲップなどが起ります。

 人の体質には、幾ら食べても肥れない体質の人と、直ぐに過食して肥る体質の人がおります。特に食べ過ぎで肥る人は、食べても食べて肥らない人よりも、僅かながらに人体は正しく反応しているのですが、往々にしてこのタイプの体質の人は、鈍重肝臓状態にあります。

 現代栄養学や現代医学では、「一日一食主義や二食主義は肥満の原因になる」と警告していますが、これは一日一食とか二食では、「まとめ食い」するからであり、この愚行は一日の総カロリー計算による、現代栄養学の食指針に従った考え方が働いている為です。

 普段の食事量の朝・昼・晩のうち、朝食を抜き、昼と夜の食事量だけをこれまで通りに行えば、決して肥ることもなく、元凶は朝食を抜いた為に、朝食分の食事を昼と夜に回すと言う食べ方から肥って来るのです。

 更に朝食分を抜くと、一日に15時間から18時間の断食をしている為に、内臓の機能はそれだけ改善され、消化吸収状態が良くなっている為、普段の昼食分や夕食分の食事量を減らしても、充分に働ける体質になる為、少食で済み、これこそ効率的な省エネ体質になれます。これからも分かるように、現代病の元凶や肥満は、食べ過ぎと、食事時間の不摂生に不健康が横たわっているのです。人間の躰の、一日のリズムを正しく把握することが、真の健康人になれる近道なのです。

 また、体質改善を望み、胃腸の消化吸収力を向上させる為には、一度は漸減食を実行して、痩せて、細胞を飢えさせ、空腹状態にする必要があります。

 《癒しの杜の会》の会員の方で、十年間に亘って「正食」を実行され、動蛋白は煮干しすら摂らないと云う、完全穀物菜食を実行されて、一日1400Kcal程度の食餌法を実行されている方がいます。この方は、自称ご自分の食事法を「仙人食」と言っていますが、現代栄養学から云うと非常識極まる食事内容でありながら、十年間と言う長期の食養道実践にもありながら、別に栄養失調で斃(たお)れることもなく、それどころか、その活動的なスタミナは、周囲の人も驚くばかりで、睡眠時間は四時間と云う短眠でありながら、普通の人の三倍以上も働いている方がおります。

 また、「食養道」の大家として有名な桜沢如一先生は、かつてインド滞在中、一日僅か700Kcal程度の食餌で、これを二年間も実践され、然も極めて元気で、食養道の指導に飛び回っておられました。
 これは少食実践者の方が、普通の現代栄養学的な食事をして居る人よりも、遥かに勝っていると云うことなのです。

 正しい断食法の指導を受け、家庭でできる「1週間程度の断食」を実践して、その後、動蛋白摂取の量を極力少なめにすれば、真の健康体を得る事が出来、人体に備わって機能をフルに活用して、長寿が全う出来るのです。